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“外見に自信がなかった”女性が、身体改造にハマった理由「人間として見られたくない」

“専門学校デビュー”が成功するも、結果的に失望してしまう

Mari

ピアス、刺青に加え、スプリットタンでもある

 高校まで、「友人が1人もいなかった」と語るMari氏だが、専門学校へ進むと一目置かれた存在になる。 「なんてことはないんですよね、髪の毛を派手な色にして、カラーコンタクトを入れて、ゴスロリの服を着て、少し痩せただけなんです。完全な“専門学校デビュー”なんです。それなのに周囲から急に好意的に見られるようになりました」  だがこの周囲の好評をMari氏は手放しに喜べなかった。 「あれほど外見でバカにされてきたので、『見た目にそんなに騙されるのか』と失望してしまったんですよね。私が褒められたのではなくて、服が褒められただけというか。そこで舞い上がって彼氏作ってデートして……みたいになれば、少し人生の捉え方も違ってきたのかもしれないんですが(笑)」  Mari氏が“外見”にこだわるのは、こんな体験も関係している。 「初めてのピアスは高校時代にあけたんです。今でいう陰キャでしたし、おかっぱなので誰も教師はピアスしていることに気づかないんですよ。でも地毛がちょっと茶色い子は指導されたりしていて。画一的な校則って、見えている部分しか見ていなくて、一体何なんだろうと思っていました。結局、人間って見えているものしか見ようとしないんだなっていう感覚はずっとありますね」

“ファンタジーの世界”だった刺青を20歳で入れることに

 専門学校を卒業してすぐに入社した広告代理店を経て、いくつもの業種を転々とした。半年に満たない在職期間だったこともあれば、10年以上続いたこともあったという。刺青は20歳になる頃に入れた。 「それまで私にとって刺青はファンタジーの世界で、身近ではありませんでした。しかし雑誌の紹介コーナーで見かけて、電話してみると予約が取れてしまったんです(笑)。それで刺青を入れる決意をしました。一般社会でも働けるように、目立つところを改造していないので、いろんな仕事を経験しました。一番長く続いたのはSMバーでしたね。好きな格好をしていても、その外見で不当な扱いを受けることもないし、居心地のいい空間でした」
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「人間として見られたくない」理由
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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