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“富裕層シフト”が加速する百貨店業界の将来は…「生き残るのは数店舗かもしれない」

J.フロント リテイリング:今後は7エリアに集中していく

 業界3位のJ.フロント リテイリングは2007年に大丸と松坂屋が合併して誕生しました。2012年にはパルコを取得しています。パルコを取得しているように、近年、百貨店業界では特にSC化に力を入れてきました。松坂屋銀座店の跡地に誕生し、ブランドの専門店で構成される「GINZA SIX」も同グループが出資しています。2021年から23年度までの中計では自社で手掛ける「自主編集売場」を縮小する方針を掲げていました。20年2月期から24年2月期における百貨店事業(大丸・松坂屋)の総額売上高は次の通りです。 7,150億円→4,672億円→5,558億円→6,580億円→7,479億円  やはり他社と同様、直近では高額品が伸び、外商の売上も拡大しました。昨年度からはインバウンドの回復も寄与したようです。今後について同社は人口の多い札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の7エリアに集中するとしています。百貨店事業に関してはアプリ会員数を増やして集客に努めるほか、若年富裕層や外商を強化する計画を挙げており、やはり“富裕層向け強化”の姿勢が伺えます。

ラグジュアリー化が進む百貨店の今後は?

 中間層が離れていくなか、百貨店が生き残るには富裕層及びインバウンド向けを強化するしかないと言われています。そして各社の動向をみてみると、特に近年は富裕層向けを強化する施策が目立ちます。前述の通り、富裕層の数自体は増えており、外商の売上も伸びています。  立地面でいえば、ターミナル駅や銀座・日本橋の大型店しか残らないでしょう。地方はおろか首都圏の郊外でも百貨店は閉鎖し続けており、都心でも狭い店舗は苦戦しています。2000年以降、都内の百貨店跡地に家電量販店が進出する動きも加速しました。そして新宿を例に挙げると、再開発で小田急百貨店が閉鎖したことにより、一部の客層が髙島屋に流れたと言われています。そのせいか、再開発ビルに小田急百貨店が復活するかどうかは未定のようです。  大都市圏に富裕層をターゲットにした大型店が数店舗程度しかないーー百貨店業界の将来はそのような構造になるのではないでしょうか。各社による富裕層の奪い合いも激しくなりそうです。 <TEXT/山口伸>
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 Twitter:@shin_yamaguchi_
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