109カリスマ店員から週刊誌記者になった女性。「母に内緒で父の愛人と仲良くしていた」“ホンネを聞き出す力”の原点
――それはすごいですね。一体、どんな思いで?
山田:子どもながら、「可哀相な自分」に納得したかったんだと思います。嫌だという気持ちよりも、純粋に父の愛人がどんな人なのかを知りたかった。でも、話を聞いているうちに、CAになりたかったけど病気で挫折していることだったり、家族に障がいのある方がいて手話ができることだったりと、彼女という人間を理解することで憎む気持ちは薄れていきました。
――子どもの頃から好奇心が旺盛だったんですね。
山田:それもありますが、母がなんでも話してくれるタイプだったことは大きかった気がします。父は家にいた記憶がなく、借金を作るなどどうしようもない人でしたが、母に好きなところを訪ねると「お酒を飲みながら、私の話をよく聞いてくれた」と言っていました。父は聞き上手なことで女性にモテているようでした。両親のパートナーという意味では、父の愛人に限らず、母の歴代の彼氏も全員知っていますから。母の彼氏ついて「本命は、絶対お母さんじゃないと思う!」なんて進言したこともあったくらい(笑)。ネガティブな状況の中でも、ポジティブなことを見つけて楽しもうというマインドはその頃から強かったかもしれません。
そこはギャルマインドというか「私は私」だけど優しさを忘れたらいけないな、と。人の目を気にして仮面をかぶって生きるよりも、自分に正直に我が道を生きる方が断然人から愛され、信頼してもらえると今でも実感しています。
『ずるい聞き方 距離を一気に縮める109のコツ』(朝日新聞出版)がある
――カリスマ店員から、なぜ週刊誌記者になったんですか?
山田:109で働いたあとは、大学を卒業して、普通に会社員生活を送ってみたんです。でも、学生時代に109で働きながら、経営者にインタビューしたり、学生起業をしたりとおもしろい経験をさせてもらって、会社員がすごく物足りなくなってしまった。そんなときに、ライターの仕事をしようと編集プロダクションの面接を受けたら、「キミ、好奇心があっておもしろいから、週刊誌の編集長紹介するよ」と。そうしたら、「いつから来れる?」と聞かれて、記者人生がスタートしました。
――もしかしたら本に書かれている「その気がない相手がつい本音を語ってしまうワザ」が活きてるんですかね? 「ぜんこうじ あいがとまらず」を実践していたと。
山田:言われてみたらそうですね。これは私が呪文のように唱え、頭に叩き込んでいる信条なのですが、
ぜん → 前傾姿勢で相手の方に体を向けて前のめりで聞く
こ → ここぞという時に目を見て「聞いてます!」アピール
う → うなずきの深さで関心度の高さを示す
じ → 上限まで広角をあげて表情豊かに(笑顔が基本。悲しむときは共感の表情)
あ → 相手が会話の主役
い → 意思を尊重
が → 我を出しすぎず、自己開示は2割を意識
と → 得意分野を掘り下げ
ま → 真面目に耳を傾け
ら → 楽に、できる限り自然に(緊張しすぎない)
ず → ずっと「あなたのことを知りたい、好き」という思いを持って聞く
とくに相手8:自分2のバランスで話すことを意識すると、相手が気分良く話すリズムを崩すことがありません。こちらの聞きたいことをスムーズに聞き出せます。
商談相手、何を考えているかわからない部下、会話の減った家族……相手はさまざまだが、まずは聞き出すことから始めてみるのもいいのかもしれない。
山田千穂
記者。埼玉県川口市出身。1988年生まれ。『週刊ポスト』『女性セブン』で記者を約10年経験。芸能、事件、健康等の記事を担当。取材で、聞く力、洞察力、コミュ力を磨く。3000人以上に取材。直撃取材、潜入取材を得意とする。大学在学中は渋谷109で販売員としてアルバイトをし、お正月セール時には1日最高500万円を売り上げる。
著書に1
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