「養護教諭を目指していた女性」が刺青を入れた理由。夜の接客業で生活をする自分に「驚いている」
胸元に太陽の刺青を宿すその女性は、宮城県仙台市にあるレズビアンバー『楽園』のキャストとして働いている。柔和な話し方が人を惹きつけるなつこさん(30歳)だ。日常に疲れた女性たちを癒やす会話のプロだが、「実は人と話すのがあまり得意ではないんです」と打ち明けた。大卒後、大企業勤務を経て飛び込んだ夜の職業。その理由に迫った。
なつこさんは宮城県気仙沼市で育った。2011年3月11日――東日本大震災の日――高校1年生だったなつこさんは、高校にいたという。
「あの日は卒業式の練習のために登校していました。午前中に練習が終わって、演劇部だった私は、部室で仲間としゃべっているところでした。本当に他愛もない会話をしていたと思います。『どうする? もう帰る?』みたいな話をしていたとき、グラグラと揺れ始めたんです」
その日から、体育館での避難所生活が始まった。母親とは合流できたものの、他の家族は別の場所へ避難していた。
「メールが通じたので、ありがたいことに、父や妹、祖父母が無事であることは確認できていました。妹は、私たちの家が津波に飲まれていくところを見ていたそうです。もう何もかもが瓦解して、日常が一変していくのがわかりました。
ただ、こうして家族が誰一人欠けることなくいられたのは、不幸中の幸いだとも思いました。卒業式の練習のあとすぐに帰ったクラスメイトのなかには、津波に飲まれて未だに行方不明の子もいます。あのときの心情は、今でもうまく言い表せません」
高校に登校していた「東日本大震災の日」
未だに行方不明のクラスメイトも
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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