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「養護教諭を目指していた女性」が刺青を入れた理由。夜の接客業で生活をする自分に「驚いている」

教員採用試験に落ちるも、一般企業から内定

 壮絶な経験をしたなつこさんは、地元の女子大学を卒業後、大手ゼネコンへ入社した。 「大学では養護教諭と調理師の免許を取得しました。養護教諭として勤務することを望んでいましたが、教員採用試験に落ちてしまったんです。私立大学まで学費を出してもらったこともあり、これ以上費用面での迷惑をかけることはできないので、大学4年生の9月から就職活動を始めて、内定をいただくことができました」  なつこさんが『楽園』に出会ったのは、まだ企業勤めをしている頃だ。 「大学ではミュージカルサークルに所属していたのですが、そのときの友人が『楽園』のキャストだったんです。ただ、先ほども申し上げたように人と話すのが得意ではないので、ドリンカーとしてお手伝いすることにしました。そのときは二足のわらじですね」

なぜ「人と話すのが得意ではない」のか

なつこさん

『楽園』では在籍6年になる

 ここで疑問に思うのは、高校時代に演劇、大学時代にミュージカルをやっていたなつこさんは、本当に「人と話すのが得意ではない」のかということだ。なつこさんは「まるで駄目で」と強調したうえで、こんな話をしてくれた。 「はっきりとしたきっかけは覚えていないんですが、小さい頃に、自分の考えを打ち明けてそれが伝わらなかったことを何度か経験したんですよね。あるいは、自分の意見を伝えられたとしても、相手がどう思っているのかなどを考えることに神経を使うのが面倒になってしまって。  演劇やミュージカルは、決められたセリフがあって、物語を自分で解釈して抑揚とか仕草を工夫することで表現できるので、好きなんです。ただ、素のコミュニケーションで同じように堂々と振る舞えるわけではなくて」  であれば当然、現在、夜の接客業一本で生活をしている自分に驚いているという。 「最初はドリンカーという話だったのに、あれよあれよという間にキャストになって、いつの間にかもうすぐ在籍6年になります。人生って不思議ですよね。でも、オーナーのヒノヒロコさんは、『最初からキャストをやってもらいたいと思ってた』とおっしゃってくれて。そう言ってくれるなら、頑張りたいなと思っています」
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「イカロス」の刺青を彫りたかったが、その前に…
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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