あえて“午後の紅茶らしさ”を取っ払う
ターゲットにはお茶やお水、炭酸を飲むような、普段は紅茶を“手にとらない”層に設定。そんな人に選んでもらう商品にするために、一体どのようなことにこだわったのだろうか。
「まずは紅茶の中身にこだわりました。1つは茶葉のブレンドです。これは『キリン 午後の紅茶 TEA SELECTION』シリーズの全てにおいて、こだわっている部分でもあります。
本商品では爽やかな香りのダージリン茶葉(30%)、すっきりした味わいのキャンディ茶葉(34%)、華やかなディンブラ茶葉(36%)といった3種類をブレンドしました。また飲んだ瞬間に広がるマンゴーの香りを中心に、パッションフルーツやライチといった南国の果実の香りを楽しめるように。
最初から最後まですっきりとした、夏らしいアイスティーに仕上げました」
さらにこだわったのは味だけではない。普段紅茶を選ばない人が手に取りやすく、パッと見て目を引くようなパッケージを作り込んだ。
「
紅茶を普段から選ばない層に向けて、あえて“午後の紅茶らしくない”パッケージに仕上げました。そもそもパッケージを見ただけで『これは紅茶だから買わない』と、即座に判断してしまう人が多いからです。今回はブランドカラーである赤は使わず、英字を並べて、輸入品のような、洒落ている見た目に。初めて見たときに『あ、素敵な飲み物が出ている』と手に取ってもらえる。そんなパッケージを目指しました」
「これまでのイメージを変える紅茶を作りたい」という想いから、中身やパッケージなど、隅々までこだわった期待の新商品。発売して約2か月、売り上げはいかがだろうか。
「商品自体は、SNSを中心にかなり評価をいただいております。ただ売上については、期待していたよりも厳しい状況です。お店に置いてもらうためには、全ての飲料商品のなかから私たちの商品を選んでもらわないといけません。
ただし、夏の季節においては多くの新商品が出る季節。そのためお客様に届けるための多くの工夫が必要なんです」
無糖ブームとはいえ、他業界からも新商品が相次ぐ現状。どんなにこだわった商品だとしても、お店側に売れる商品だと思ってもらえなければ置いてもらえない。また、やっとの思いで置いてもらっても、それが消費者の求めるものになっていなければ意味がない。
「例えば『キリン 午後の紅茶 ミルクティー 微糖』。販売した直後は、SNSでもかなり反響をいただき、想像よりも売り上げが伸びた商品となりました。ただ1回バズった後は徐々に落ちてしまっていて。
そもそも『ミルクティー=甘いもの』というイメージがあるためか、『甘くないのであれば他の飲み物でもいいや』と選ばれないこともありました。
対して『おいしい無糖』については、40〜50代男性に受け入れてもらえる商品として今も人気が続いています。
ただ最近、ジャスミンティーやルイボスティーなどの人気が高まってきたことにより、無糖の紅茶の立ち位置が曖昧になってきています。以前カレーとのペアリングなどを打ち出した際にも、『じゃあ緑茶とは何が違うのか』といった声もあり……。飲料業界全体での無糖紅茶の立ち位置は、考えていかないといけませんね」
広島生まれ、東京在住のライター。早稲田大学文化構想学部卒。趣味で不定期で活動するぜんざい屋を営んでいる。関心領域はビジネスと食、特に甘いものには目がない。X(旧Twitter):
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