このところは「宮澤元首相の孫なの?」と驚かれる
――バラエティ番組からは割と早めに卒業して、舞台に活動の場を移していった印象です。
宮澤:舞台でキャリアを始めさせていただけたことで、自分に足りない部分を感じられましたし、「早く上達しなきゃ!」と思えました。舞台では、首相の孫だろうがへたくそならへたくそと書かれて仕事が来ません。逆に言えば、自分が頑張れば「ちゃんとオーディションで選ばれたんだな」と見せられる場でもある。それに実際に宮澤元首相の孫だからと言ってお金を出して舞台を観に来る人なんて、いませんよね(笑)。「話題性じゃない?」というネガティブから入ったことは、ポジティブに転換していけるという意味で良かったなと思います。
――今や、ドラマや映画といった映像分野でも、女優・宮澤エマさんとして大活躍です。
宮澤:最初からピュアにお芝居だけでデビューできていたら、と思う自分がいなかったわけではありませんけど、でもタレントとしての活動がなかったら出会えていなかった人や、知ってもらえなかった人もいる。やっぱり名前を知ってもらうことが、最初ですから。そこがあったことによってここまで来ているので、後悔はありません。それにこのところ、ドラマに出るようになってから、「宮澤元首相の孫なの?」と言われるようになったんです。たったこの数年で、「首相の孫」のイメージが消えたのだとすれば、ここまで築き上げてきたことは大事にしつつも、そこに固執せず、次の10年はまた全然違う人になっていたら面白いなと思っています。
この仕事は一夜漬けではできない。特に三谷幸喜作品は
現在公開中の三谷幸喜監督作品『スオミの話をしよう』に出演
――ギリギリのところでどうにかなってきたタイプだとお話されていましたが、このお仕事を始めてから、ピンチに陥ったことは。
宮澤:それがこの仕事は、今までの論法が通用しないんですよ。ついつい先延ばしにしたくはなっちゃうんですけど、でも、準備期間をどれくらいするかによって、結果が変わって来るという「成功体験」が実際に多いんです。たとえば外国語とか方言とか、一夜漬けじゃどうにもなりません。あと、三谷さんのようにアドリブを求められる作品も、用意していたものと違うものを求められたときに、どれだけ返せるかは、より多くの準備があればこそなんです。とにかく三谷さんの現場は、予想だにしなかったことが出てくるので(苦笑)。
――三谷さんとは、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(脚本)、舞台『日本の歴史』など、幾度も組まれていますが、現在は『スオミの話をしよう』が公開中です。宮澤さんは、要所要所で登場する神出鬼没な女・薊(アザミ)役です。本作はクランクイン前にリハーサルもあったそうですが、それでも現場でかなり変更があったとか。現場に行って初めて聞く設定や演出もあるのでしょうか。
宮澤:はい。セリフが変わることはあまりないんですけどね。三谷さんの台本って、すごくシンプルな会話劇で、あまりト書き(登場人物のセリフ以外の動作や行動の指示)がないんです。なので、どういった動きになるのかは、その場に行かないとわかりません。確かに今回、リハーサルはありましたが、三谷さんも、クランクインして実際にカメラの前で動いている私たちを見て生まれてくるものがあるので、そこでポン!と言われることが、結構あるんです。それが「いや、思ってたのと全然違う」と。
――聞いているこちらは笑っていられますが、実際に演じるみなさんは大変ですね。
宮澤:それも準備してきたことと、180度違うことを要求されることが多いんですよ。面白くできないと、自分が滑った、私が面白くない人だ、みたいになってしまうので、必死です(苦笑)。最終的に、より面白くなるために、準備は必要ですね。
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):
@mochi_fumi記事一覧へ 【公開情報】
『スオミの話をしよう』は全国公開中
公式サイト
https://suomi-movie.jp/
(C) 2024「スオミの話をしよう」製作委員会
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