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唐揚げ店の閉店ラッシュは「当然の結果」。飲食大手の参入が”悪手”だった理由――ニュース傑作選

家庭でも作れる「実用食」は外食・中食に不向き

私は食のジャンルを「実用食」「嗜好食」の2種類に分けて考えています。実用食とは日本人が日常的に食べたくなるもの、多くの国民が手を出しやすく食べ慣れているものです。うどんやカレー、ラーメン、スパゲッティ、回転寿司などが含まれるでしょう。一方の嗜好食は日本の文化に馴染みのないもの、高額なものなどです。タイ料理や高級フレンチ、割烹料理などが含まれます。 一般に外食や中食では、家庭で調理しにくい、もしくは調理しえないものが期待される傾向にあります。嗜好食はこれに当てはまるものが多く、外食や中食に向いているといえるでしょう。そういった意味では唐揚げは実用食ですが、家庭で作るのが面倒だという人も多く、外食・中食向きとも思えます。 ただ、それでも家庭で作ろうと思えば作れてしまうのが唐揚げです。またスーパーやコンビニエンスストアでもおいしい唐揚げを購入できます。冷凍食品の唐揚げを家庭で「レンチン」すればおいしく食べることもできます。つまり、外食・中食に期待するモチベーションが低いのが唐揚げなのです。

「残っている店舗」の特徴は?

個人事業主や中小事業者の店舗も閉店が相次いでいますが、閉店せずに残っている店舗もあります。 ひとつはブーム前から続いている老舗の唐揚げ専門店。高利益が見込めなくても唐揚げを作って売ることがライフワークのようになっている個人店などです。損益分岐点も低く、継続性があります。「ブームだから儲かりそうだ」「出店コストが安いから」と、便乗的に参入した店舗はほぼ撤退の憂き目を見ています。 もうひとつは好立地の店舗。目的来店ではなく衝動来店が見込める店舗ですね。にぎやかな商店街などの店舗は「ちょっと小腹が空いたから」「いい匂いに誘われて」と偶然立ち寄るお客さんが多くなります。 そして、商品のラインナップや味のバリエーションが豊富な店舗。コロッケやメンチカツ、焼き鳥などが並んでいる、唐揚げ以外のものも買える利便性の高い店舗です。また醤油唐揚げや塩唐揚げ、手羽先やチキン南蛮など味のバリエーションが豊富な店舗も継続性があります。店舗に行っても買えるのはモモ肉の醤油唐揚げだけ……となると、よほどそれが好きな人でなければ来店しなくなるでしょう。
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ブームに便乗するだけでは生き残れない
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1993年創業の外食産業専門コンサルタント会社:株式会社ブグラーマネージメント代表取締役。これまで19か国延べ11,000店舗のコンサルタント実績。外食産業YouTube『永田ラッパ〜食事を楽しく幸せに〜』も好評配信中。

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