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「すでに歯がボロボロ。歯医者に行っても意味がない」は勘違い/歯科医師・野尻真里

治療をした歯は必ず定期的なメインテナンスが必要

治療

※写真はイメージです

治療をすれば治ったと思われがちですが、実際は、悪いところを除去し、それを何らかの材料で補ったにすぎません。 脱離したものを接着剤でくっつけても数年経過すると劣化で外れてきたり、接着部分が汚れてくるイメージがありますよね。歯と悪いところを補った何らかの材料も同じです。詰め物は長く持って大体7年くらいで劣化が見られるようになり、被せ物はご本人の手入れによって長持ちするかどうか変わってきます。
詰め物

詰め物が劣化して浮きや段差、欠けが見られる

今、治療跡が多く、もうすでにボロボロのお口だと感じている人は、劣化や再トラブルの有無と併せて、普段から磨き残しがあるままになっていないかも歯医者さんでみてもらいましょう。

一度治療経験のある歯は「再度トラブルになりやすい」という認識を持って

歯の変化治療したことがない歯に比べて、一度治療をおこなった歯は再度トラブルが起きやすいものです。治療を繰り返すたびに歯への影響はどんどん大きくなり、歯を失うリスクも高まっていきます。 特に神経を失った歯では、歯の破折リスクが増加します。イメージとしては、生きている木を手で曲げてもすぐには折れないでしょう。しかし、枯れ木を手で曲げると、すぐに折れてしまいます。これと同じで、神経の無い歯は枯れ木と同じように圧力に弱くなっているのです。 詰め物は、肉眼では見えない歯と詰め物の隙間から細菌が入り込んで悪さをしやすく、上記のように詰め物自体も経年的に劣化をします。 被せ物は、歯との境目にプラーク(歯垢)が溜まりやすく、天然の歯よりも磨きづらいです。材料によっては、歯よりもプラークが付きやすいこともあります。つまり、治療経験のある歯は、治療経験自体がむし歯や歯周病のリスクの一つとなってしまうのです。 一度治療を行った歯は、特に丁寧なケアと定期的な検診が必要と思ってください。

今ある歯を一生涯守りましょう

生まれ持った自分の歯を全て守るというのが予防歯科の目標です。しかし、スタート地点は人によって異なります。すでに歯を何本か失っていても、残せる歯を一生涯残したら良いのです。そのためには毎日のお口のケアと、定期的なメインテナンスが欠かせません。年齢を重ねても食事を美味しく食べられるようにするためにも、今日からお口の健康に意識をむけてみてください。 <文/野尻真里>
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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