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【広岡達朗】メジャー帰りの選手を甘やかすな。複数年契約なら「基本給+完全出来高払い」であるべき理由

複数年契約なら「基本給+完全出来高払い」で

 プロ野球の契約は1年が原則だと思う。どうしても実力のある選手と複数年契約をしたいなら、1年目はたとえば全選手の平均年俸などを基本給として契約し、「これこれ以上の成績を挙げたら何億円でも出す。その代わり、これ以上の仕事をしなかったら最低保証しか出さないよ」というインセンティブを利用すればいい。  インセンティブは目標の行動をうながす「刺激」や「動機」を意味する経済用語で、選手の意欲的な行動を引き出し、モチベーションを向上させる効果がある。本当の意味での出来高払いにすれば、選手は一生懸命やるし、結果として力のある選手は何億円でも稼ぐことができる。  それをアメリカの年俸バブルの真似をして複数年契約で保証するから、ベテランなど実績のある選手が手を抜いて「給料泥棒」と言われるようになるのだ。  こんなことを言うと、「現行の契約でも活躍すれば翌年の年俸がボーナスになるから同じではないか」という意見があるだろうが、それはプロとしての覚悟が違う。  たとえば引退間際のベテラン選手は、最後のシーズンを迎えても前年の高給が担保になるし、球団も実績のある選手の力が落ちても、それまでの貢献度を考慮して大幅減俸はしにくいという温情が働く。  逆に先述のような厳しい出来高払いなら、複数年契約にあぐらをかくことはできないから、結果として選手生命を限界まで延ばすことになる。  この出来高払い契約は、大谷ブームのいま、急に思いついたことではない。

メジャー帰りの選手を甘やかすな

 ひとつ例を挙げるなら、2015年、メッツから9年ぶりに日本球界に復帰し、推定年俸4億円の3年契約でソフトバンクと契約した松坂大輔投手だ。  横浜高校のエースとして甲子園で活躍した松坂は、西武で8年間に108勝を挙げて「平成の怪物」と呼ばれたあと、2006年秋にポスティングシステムでボストン・レッドソックスに6年契約総額5200万ドル(約60億円)で移籍した。  その後、松坂は8年間のメジャー生活で肩を痛め、56勝しか挙げられなかったが、9年ぶりに日本に復帰した手負いの怪物をソフトバンクは年俸4億円の3年契約で迎え入れた。この時点での松坂の日米推定総年俸は80億円を超えるという報道もある。  問題はその松坂が、その後ソフトバンクで1年、中日で2年、西武で1年の計4年間で6勝しかしていないことだ。ちなみに松坂の通算勝利数は日本で114、大リーグで56の計170勝だが、私が驚いたのはソフトバンクが松坂入団の翌2016年、大リーグ・カブスでの2年間で5勝5敗の元エース・和田毅を3年契約+出来高払いで復帰させたことだ。  和田は復帰後いきなり15勝したが、その後は故障で1ケタ勝利が続き、一時はマウンドに立てないこともあった。
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「巨人が獲得した複数年契約選手」の大半が…
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