スポーツ

【広岡達朗】勝負の真理を無視したCSはやめるべき。上位3チームが短期間の「敗者復活戦」を行ってどうするのか

 両リーグ計6地区30チームに肥大した大リーグには、地区優勝3チームと敗者復活のワイルドカードの3チーム、計6チームで各リーグの優勝を決めなければならない制度上の事情がある。  つまり各地区の1位チームが同じ条件で過酷なポストシーズンを戦ってワールドシリーズを目指すのだから、下剋上の単純な逆転優勝はない。  これに対し、日本のCSは2007年に始まった。リーグ2位と3位がまず3試合のファーストステージを行い、2勝先勝のチームがリーグ1位と4勝先勝のファイナルステージを戦う日本のCSは、大リーグのポストシーズンとは意味も中身も違う。(※本記事は、広岡達朗著『阿部巨人は本当に強いのか 日本球界への遺言』(朝日新聞出版)より抜粋したものです)
DeNA・三浦大輔監督

DeNA・三浦大輔監督 写真/産経新聞社

経済効果には天と地の差が

 第一、2リーグ・各6チームしかない日本で、上位3チームが短期間の「敗者復活戦」を行ってどうするのか。私がいつも言うように、どんな制度にも理由はあるが、完全はない。日米どちらも、ペナントレースが終わったあとでポストシーズンがあればファンは楽しみが増えて喜ぶし、MLBやNPB、球団には入場料のほかにテレビなどの放送権料とグッズなどの事業収入が入る。  しかし、テレビの放送権料にしてもグッズや広告などの事業収入にしても、莫大な世界市場を持つ大リーグと、短期間の限られた放送権料と入場料収入しかない日本での経済効果は比較にならない。

ペナントレースの重みはどこへ

 CSといえば、日本でもペナントレースで2位・3位のチームがポストシーズンを勝ち上がって日本一になった例が4回ある。なかでも2010年、西村徳文監督のロッテはパ・リーグ3位からCSのファーストステージで2位・西武に連勝し、ファイナルステージではソフトバンクを1勝3敗から3連勝で逆転してCSを突破。日本シリーズでも中日を4勝2敗1分で破って「史上最大の下剋上」を達成した。  一方のペナントレースでは、史上初の最終戦同率首位対決があった。  1994年10月8日、ナゴヤ球場で行われた中日-巨人の優勝決定戦は、長嶋監督が率いる巨人が3時間14分の激闘の末、6–3で高木守道監督の中日を撃破して「10・8決戦」として球史に残った。このあと長嶋巨人は日本シリーズで森祇晶監督の西武を4勝2敗で破り日本一を飾っている。以上の試合はどちらも名勝負として野球ファンの記憶に残っているが、私が言いたいのは、どちらの勝利がリーグの代表で日本一にふさわしいのか、ということだ。  ロッテファンは当然「下剋上の大逆転」というだろうが、巨人は1勝の差でリーグ優勝を勝ち取り、日本シリーズに進出した。「1勝は1勝」という言葉があるが、巨人のペナントレース最終戦の1勝には長いシーズンを積み重ねた重みがある。  2024年も、4年ぶりにリーグ優勝した巨人がCSで3位のDeNAに敗れたが、私は日本シリーズの出場権があるのは、ペナントレースを勝ち抜いたチームだと思っている。短期決戦の敗者復活制度の勝者は、リーグ代表とは認めない。  だから勝負の真理を無視したCSはやめるべきだと思っている。コミッショナーが日本野球の将来のために、オーナー会議を説得して改革に取り組んでもらいたい。
次のページ
コミッショナーに改革の権限を与えよ
1
2
おすすめ記事