ライフ

20年以上放置していた実家が「ごみ屋敷」に。高齢の父が一人暮らし、“生前整理”に5日間もかかって

「実家に帰るたびに、ごみ屋敷に近づいている……」  親が高齢になると、頭を悩ますのが「実家の片付け」ではないだろうか。親が元気で健康なうちは、実家に置いている荷物もそのままにしておけるが、もしも病院や介護施設に入ったり、亡くなったりした場合には、自分たちで実家を片付けなければならない。
ごみ屋敷

足の踏み場のない部屋

 まさにその問題に直面したのが私(池守りぜね)だ。冒頭の言葉が、実家に帰るといつも頭に浮かんでいた。そもそも実家とは言いつつも、実際には父の独居であり家族が縁もゆかりもない土地だった。私の現在の住まいからは、電車やバスを乗り継いで1時間半かかる。なぜそのような場所に父が流れ着いたのかといえば、少々面倒な事情があった。

家族3人で住んでいた一軒家から2DKへ

 今から約20年前に、父は家族3人で暮らしていた一軒家(45平米)から2DKの集合住宅に引っ越した。一軒家には、私が高校生の頃に家出した母の衣服や、就職して家を出た私の荷物がそのままになっていた。  父と母は平成最後の年に協議離婚するまでずっと戸籍上は夫婦のままだった。母は別の場所で新しいパートナーと暮らしながらも、父は「戻ってきた時のために」と荷物をそのままにしていた。  結局、私も母も家族で暮らした一軒家に戻ることはなかった。しかし、一時帰宅をしていた母が近隣トラブルを起こしたために、すぐに一軒家から引っ越すことになった。父は無理やり家族3人分の荷物とともに、2DKに引っ越した。  これまで父の仕事の都合で全国各地10回ほど引っ越しをしていたために、開けていない50個ほどの大量の段ボールも新居に持っていった。引っ越し業者が単身の引っ越しと勘違いしたため、家族3人分の荷物がトラックに乗り切らず、追加のトラックを出すはめになった。  何事にも大雑把な父は、とにかく荷物がすべて部屋に入ればいいとしたため、部屋中が段ボールで埋め尽くされ、Amazonの倉庫のようになった。段ボールのすき間を縫うように歩き、わずかなスペースに寝袋を敷いて父は寝ていた。  まさにごみ屋敷へのカウントダウンが始まっていた。

寂しさから、隙間を埋めるために“ごみ”を拾う父

 そこに拍車をかけるように、父はごみを拾ってくる癖があった(*違法になる可能性があるので真似しないように注意してください)。  父のごみ拾いの片鱗は、私が中学生の頃からあった。その当時、父は単身赴任だったため、我々家族は東北地方と関東と離れて暮らしていた。ある時、父の家に行くと、壊れたギターのアンプや、本などで一部屋がごみで埋まっていた。  本来なら単身赴任ではなく家族で引っ越すはずだったのだが、母に恋人がいたために建前上は私が転校しないで済むようにという理由で母は父と別居していた。今にして思えば、母の異変に薄々気づいていたはずの父は、その寂しさから家族が住むはずだったスペースに拾ってきたごみを置いていたのだ。結局、その頃のごみの一部も、一軒家からの引っ越しで実家に運ばれた。
次のページ
父の独居にはゴキブリが…
1
2
出版社やWeb媒体の編集者を経て、フリーライターに。趣味はプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。X(旧Twitter):@rizeneration

記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】