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家は傾き、地下水が汚染……。産廃の上に建てられた住宅

産業で汚染された土地が、浄化処理をされずそのまま宅地造成されたというケースが問題になっている。多くの住民は汚染の事実を知らずに住宅を買い、調査や補償も十分にされないまま、今でも土壌汚染や地下汚染の被害に苦しんでいる。日本には、こうした土壌汚染の可能性のある場所が、なんと93万か所もあるという! そんな”土壌汚染列島”ニッポンの実態をリポートする。

桃花台(愛知県)
家は傾き、地下水が汚染……。産廃の上に建てられた住宅

 床に置いたビー玉が自然に転がっていく。それも一定方向ではなく、部屋のあちこちに散らばっていく。

「この家、不等沈下でひしゃげているんです。まさかこんなことになるとは予想もしていなかった」

 現地を案内してくれた丸山直希さんが住むのは、愛知県小牧市にある桃花台ニュータウンの一角、城山5丁目(105戸)。地面にはところどころに亀裂が走っている。

「ここを造成する前の’60年代に、王春工業という会社が産廃を投棄していたのがその原因です」

 当時はまだ産廃などを取り締まる「廃掃法」がなく、現状では王春工業の責任を問うことができない。

「許せないのは、そういう土地であることを隠して、私たちに土地と家屋を売った愛知県とUR(独立行政法人・都市再生機構)です。分譲が行われた’80年代後半、ここは市民の羨望の的。名古屋のベッドタウンで景色もいい。なにより、県が造成してURが分譲する超優良物件でした」(丸山さん)

 ところが、’93年頃からドアの開け閉めができなくなったという。丸山さん宅の壁にはドアがぶつかってできた無数の擦り傷がある。初めは湿気のせいと思いドアをカンナで削っていた。

「そのうち、我が家だけではなく『ウチもおかしい』との声が徐々に上がり、多くの家で同じようなことが起きていることを知ったのです」(同)
 
 ’06年1月、住民の疑問に答えるため、URは説明会を開催。’04年に引っ越した2軒(現在は空き地)の敷地でボーリング調査を行ったところ、「最大で9cm沈下しました。地下4~8mの部分に『自然界には存在しない油分』があります」と発表したのだ。

「もう、ただただびっくりしました。私たちは産廃処分場で暮らしているんだって」

◆基準値7.8倍の総水銀、170倍の鉛が検出

 地盤のゆがみだけではない。環境汚染も深刻だ。昨年の調査でも、城山地区の地下水からは、環境基準の7.8倍という総水銀が検出されている。鉛も基準値の170倍以上が検出。

「ところが、県はこの産廃を『粘土』だと言い張り、『その一部にたまたま環境基準を超える成分があった』と説明しています。つまり、あくまでも普通の土地を造成したのであり、ここは例外だと。ふざけるなと言いたい」

 問題解決の糸口を見つけようと、丸山さんは’06 年4月、住民組織「考える会」(約30戸が加盟)を結成し、県とURに城山5丁目全域での土壌調査を強く訴えた。

 だが、URも産廃の存在は認めているが、「被害は狭い範囲」という認識を変えていない。同社の業務推進チームはこう説明した。

「今、地盤は落ち着き、沈下はほぼ収まっています。そこで、住宅をジャッキアップして傾きを補正する救済案を住民に提示しました。また、ボーリング調査の結果、産廃汚染は31戸の敷地に留まると判定したので、その31戸を対象とした補償を考えています」

 つまり、土壌を入れ替えすることもなく、救済範囲を一部の住民に絞るということだ。この案に住民は納得していない。

「王春工業の操業区域は31戸の敷地より広い。試しに、線引きの範囲外で私たちが土を掘削してみたところ、油の混入を確認しました。一方的な線引きは認められません。それに、地下の汚染は、真上の土地だけが影響を受けるわけではありませんから」(丸山さん)

 丸山さんたち住民は’08年3月、県とURに公害調停を申し入れた。しかし、県もURも「調停に応じない」構えを崩さなかったため、同年8月、調停はわずか3回で打ち切りとなった。

「つい最近も、城山地区から少し離れた地域で、路上の段差が急に大きくなっている地点を確認しました。この地域の地盤がどうなっているのか、本当にわかりません」

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地盤の緩みからか、地面と塀との間に
隙間が広がっている場所が何か所もある


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隣接する地区でも、ここ数年で地面が
波打つようになった場所が多く見られる


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URが地下から掘り出した産廃。
開けると強烈な異臭を放つ


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丸山さん宅2階から撮影した城山地区。
かつては高嶺の花の住宅街だったが、
現在買い求める人は誰もいなくなった


― 住宅地の土壌汚染がヤバすぎる!【3】 ―




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