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「大阪桐蔭の藤浪晋太郎」が、高校野球の“21世紀最強のエース”で間違いない。「プロが高校生を相手にしているように見えた」

 高校野球において、21世紀最強のエースは間違いなく大阪桐蔭時代の藤浪晋太郎(現・横浜DeNAベイスターズ)だろう。この藤浪を擁する大阪桐蔭は、春夏連覇を果たしている。高校野球の球史で見ても夏の甲子園で見せたピッチングは、桑田や松坂といった投手と並べてもトップクラスと言っていい。  しかし、藤浪はボーイズリーグのころから全国大会に縁がなく、いいところまで行っても勝ちきれなかった。大阪桐蔭でも2年の夏、背番号1をつけた藤浪は大阪大会の決勝戦で先発を任されながらも、7回途中で降板。最終的には、東大阪大柏原にサヨナラ負けを喫して目の前で甲子園出場をさらわれた。試合後、泣きじゃくった2年生エースは、勝ちきることのできないことを痛感していたが、それを糧にしていた。 ※本記事は『データで読む甲子園の怪物たち』 (集英社新書)より抜粋・編集したものです。
藤浪晋太郎に声をかける森友哉

第94回全国高校野球大阪大会・決勝 履生社対大阪桐蔭 藤浪晋太郎に声をかける森友哉
©産経新聞

センバツで見せた“圧倒的なピッチング”

 実際のところ、センバツまでは粗削りなピッチングだったため、先制点を与える場面はあったものの要所では地力を見せていた。  例えば3年春の準々決勝の浦和学院戦のピッチング。藤浪は3連打を浴びて、無死満塁のピンチを背負う。ここで、気持ちを切り替えたのか、自己最速を更新する153㎞/hを記録するなどで、三者連続三振を奪った。「あの場面がターニングポイントでした。点を取られていたら、そのままダダーッといかれていたでしょうね。踏ん張り切るべきところで踏ん張れたから、一皮剥けたのかなと思います。粘り強くと口うるさく言われて、そういう練習をして、そういう力を出せた。自分が持っている以上の力を出せたのかもしれません」と自身がコメントするように絶体絶命のピンチを乗り越える圧倒的なピッチングを披露したのだ。  このピンチを切り抜けた藤浪は一皮むけたピッチングでそのままセンバツの頂点に立った。

準決勝と決勝を完封…夏の甲子園で見せた圧巻の姿

 その後大きな成長を見せる。藤浪は夏に向けてフォームを改造。6月に練習試合で対戦した明徳義塾の馬淵史郎氏は「前は(右腕が)背中側に入りすぎて引っ掛かっていたが、それがなくなった。フォームにゆったりさが出てきたよね」と分析した。  藤浪自身は「前はタメを作ろうとしすぎて、左肩が入りすぎていた。余計な動作を削ってきたつもりです」と話した。ゆったり投げられるようになったことで、体重移動も腕の振りもスムーズになり、変化球の精度も増した。とくにセットポジションでは、ストレートが力んで抜けても、スライダーで立て直すことができた。「力んでしまうと抜ける。そこを修正してきたつもりです。春に比べて、変化球でカウントが取れるようになったと思います」と語るように最適なバランスで投げることができていたのだ。  夏の甲子園では驚異の奪三振49、防御率0・50を記録。初戦から危なげないピッチングを見せ、試合を重ねるごとに調子を上げていく。「甲子園は(スピード)ガンが出やすい。150キロぐらいは出ると思うので球速より球質を意識したい。伸びとキレを重視しています」と話すようにバランスよく投げた結果大舞台で最高のパフォーマンスを残す。内容を見ても準々決勝から徐々に調子を上げていき、準決勝の明徳義塾戦と決勝の光星学院戦では完封。春夏連覇に導いた。
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まさに「21世紀最高の優勝投手」
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野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Instagram:godziki_55 X:godziki_55 TikTok:@godziki_55 Facebook:godziki55

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