佐々木朗希と菅野智之、どうして差がついたのか…“過保護な環境育ち”と“百戦錬磨のベテラン”で分かれた大きな明暗
菅野智之(ボルチモア・オリオールズ)と佐々木朗希(ロサンゼルス・ドジャース)ーー年齢は一回り違うとはいえ、この二人がNPB時代に圧倒的な実績を残してきたのは、ご存じの通り。しかし、彼らが最高峰の舞台に立ったとき、結果と評価に大きな明暗が生じてしまった。いったいなぜなのか。
35歳でメジャー挑戦を果たした菅野は、フィジカルの全盛期は過ぎているものの、“熟練の投球術”をベースに安定感のある成績を残すことに成功。対して、160km/h超のストレートとフォークでNPBを支配してきた佐々木は、いまのところ適応に苦しんでいる印象だ。各所で“素材型”の限界が指摘されている。
移籍が決まったときの世間の評価は、「佐々木は活躍し、(年齢的に)菅野は厳しい」という声が多かった。しかし、現状はそうではない。その差はどこにあるのか。
菅野は、2023年オフにMLBオリオールズと1年約20億円で契約。35歳という年齢にもかかわらず高評価を勝ち取った背景には、長年NPBで磨いてきた「完成された投球術」と「調整力」がある。
特筆すべきはフォークボールの進化だ。20代のころはスライダーを軸にしていたが、年齢とともに勢い任せで抑えることや、球威を維持するよりも“緩急”や“コマンド”に投球の比重を移行。特に昨年からフォークの精度が大きく向上しており、投球の幅が広がった。MLBでもフォークが冴え渡っている。
さらに、NPB時代から「ローテーションを守り続ける安定感」に定評があった。年間25試合以上を投げ続け、WBCやプレミア12などの国際大会でも頼もしい存在だった。
そのベースには、自己マネジメント能力の高さがある。球数制限、コンディション管理、投球プランニングまで自己完結する姿は、“ベテランの知性”を体現した存在といえよう。
最大の持ち味である総合力こそが、過密スケジュールやマウンド環境への対応力に直結し、メジャーでも通用する“実戦派”投手として高く評価されているのだ。

©産経新聞
佐々木朗希と菅野智之の差はどこにある?
菅野智之──“完成された技術”と“円熟の自己管理”
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野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55
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