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SNSで話題の“江戸走り”男を直撃、「疲れない」歩き方を研究し続けた11年。家族は「よくも悪くも冷ややかです(笑)」

SNSで頻繁に目にする、奇妙な走り方をする中年男――。「歩いているだけなのに、全然疲れない」と視聴者を困惑させ、その動画は次々と拡散された。この埋もれていた技を掘り起こしたのは、AIでも最新テクノロジーでもない。たった一人の“走りオタク”の執念だった。古代の歩法を「江戸走り」の名で現代によみがえらせた男の正体とは?
エッジな人々

大場克則氏

江戸から京都まで3日で走りたい

 江戸時代の人々は、女性でも一日に30~40㎞を歩いていたという話がある。なかでも飛脚は、江戸から京都で最短3日で移動したという。現代のような交通手段がなかった時代に、なぜそんな長距離移動ができたのか──その謎に真正面から挑み、長年をかけて再現したのが、「江戸走り研究家」を名乗る大場克則氏だ。  研究成果を紹介する動画が、’24年末にインスタグラムで100万回再生されたことをきっかけに大バズりし、若者を中心にマネする人も続出。今や月に数十件の取材を受ける「時の人」に。そんな彼に、研究の発端からプライベートまで聞いてみた。 ──以前は普通のサラリーマンだったそうですね。 大場:はい。毎日自宅と会社を往復するだけの毎日でした。 ──それはそれで鬱々としそうですね。気分転換やストレス解消法などはありましたか? 大場:ある日、いつにも増してクサクサしていて、その気分を家庭に持ち込みたくないという思いから、試しに1駅分歩いてみたんです。距離にして5㎞くらいかな。そうしたらなんとなく気分がよくなったので2駅、3駅と距離を延ばしていったんです。時間がかかりすぎてしまうので、そのうち走るようになって、その延長でマラソンにも参加するようになったんです。 ――学生時代にスポーツなどをやられていたんですか? 大場:いえ、中学ではバイオリン、高校ではオーケストラ、大学では演劇部に所属していたので、スポーツとは無縁の人生でした。でも走り始めたら面白くて、フルマラソンはもちろん、最終的には(※1)100㎞マラソン大会に出場しました(笑)。結局、膝を痛めてリタイアせざるを得なくなってしまって。でも、その経験が「江戸走り」を研究するきっかけになったんです。 ――研究までの経緯は? 大場:最初はランニング講座や教室を転々としていたのですが、どうもピンとこないんですよね。そんな中で、たまたま古武術の本に出合い、「江戸時代の飛脚や武士が100㎞や160㎞走っていた」なんてお話を読んじゃいまして。こりゃ面白いぞ、ちょっと探ってみようということで、国会図書館通いが始まりました。
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古文書と格闘して、つかんだ歩き方とは
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