【アライグマ VS 世界遺産】世界遺産を破壊する凶悪なアライグマが増殖
【アライグマ VS 世界遺産】
世界遺産を破壊する凶悪なアライグマが増殖
その愛くるしいルックスとは裏腹に、深刻なトラブルを引き起こしているのがアライグマ。京都市の上賀茂神社では3年前から姿が確認され、被害に悩まされている。ちなみに、上賀茂神社は世界遺産に認定されている貴重な文化財。宮司さんが話す。
「アライグマは屋根裏にすみつく習性があるのですが、1か所だけにフンをするので、フンが溜まるとその重みで天井が抜けてしまい、穴が開いてしまう。もちろん、柱や屋根などへの引っかき傷なんて当たり前です」
世界遺産にウンコをするなんて、まったくもって不届き千万。猟友会などに依頼し、捕獲すればいいのではないか?
「神社のある地域は鳥獣保護区なので無理なんです。現状、できることといえばワナを仕掛けるぐらいですが、ヤツらは頭が良く、一向に捕まらないんです」(宮司さん)
また、カプサイシンと呼ばれるトウガラシ成分の薬品を建物に吹きつければアライグマの侵入を防げるらしいが、これも「重要文化財に指定されている箇所には、条例によって薬品の塗布はできない」(同)のだという。普通の神社なら取れる対策が、重要文化財だからダメとは皮肉な話だ。
もともと外来種だったアライグマが日本へ輸入されたのは ’70年代後半のこと。繁殖力が非常に強く、さらに、捕獲したら山に放すというかつての自然保護行政の方針もあり、現在のように急増するに至っている。やはり、山狩りでもして殺処分するしかないのではと思うが、これに異を唱えるのは京都でアライグマの生息実態調査を行う関西野生生物研究所の川道美枝子代表。
「ハンターに捕獲を依頼しても、ボランティアなので駆除が徹底できない。一時的に減らすことはできても、繁殖力が強いので結局は元の木阿弥です。また、アライグマは伝染病を運ぶので、独自に殺処分して山に埋めたりすると、その死骸を食べたほかの動物から伝染病が蔓延する恐れもあります」
京都府では、川道代表の提唱のもと、行政のサポートにより地域住民が出没をモニターし、ワナを仕掛けて捕獲、殺処分は獣医師が行うというプロセスを取っている。
「今のところ、うまくいっています。アライグマの個体数が減少傾向にあるのは、全国でも京都だけではないでしょうか」(川道代表)
ところで、世界遺産である上賀茂神社だけに、アライグマがつけた傷を修復するには相当なコストもかかるのでは?
「21年ごとに修復工事を行っているのですが、今年がちょうどその時期で約10億円の予算をかけて行われます。被害分はその予算で吸収できるので、不幸中の幸いでした」(宮司さん)
喜んでいる場合ではないと思うのだが……。
上賀茂神社の柱に無数に残されているアライグマの爪跡。
TV番組も輸入増加の要因だったというが、もはや「ラスカル」なんて言ってる場合じゃない
取材・文・撮影/青山由佳 取材・文/牧 隆文 浮島さとし
取材/谷口キンゾー 吉岡 俊 写真提供/関西野生生物研究所
― ここは日本か?[人間VS野生動物]泥沼の市街戦【6】 ―
この特集の前回記事
ハッシュタグ