更新日:2012年10月13日 12:29
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手口を知っているのにオレオレ詐欺にダマされる心理

架空の投資話や訪問販売など、悪質業者の被害は後を絶たずニュースを賑わしているが……多くの人は思うだろう、「なんで、ダマされるの?」「ダマされるほうがバカじゃないの?」と。だが油断は禁物である。 ◆心理学者が分析!詐欺師の心理誘導テクニック
西田公昭氏

西田公昭氏

 詐欺被害の実例を見ると「ダマされる人がバカなだけ」「自分は大丈夫」と感じる人は多いかもしれない。が、「その自信過剰こそがダマされる原因の一つです」と話すのは社会心理学者の西田公昭氏だ。 「振り込め詐欺の被害者の大多数も『手口を知っていたがダマされた』と証言しますし、知識があっても、注意をしていてもダマされてしまうことをまず自覚しましょう。詐欺師は経験則をもとに築き上げた洗練された心理誘導のパターンを持つ、ダマしのプロです。そのダマしのトリックは心理学の原理・法則にも合致するもので、人は誰もが簡単にダマされるものなのです」  例えば前回紹介した、宝石の押し売りを断れず、その場を去りたい一心で50万円のダイヤを買ってしまった行動(※)は、パニック状態の人が行ってしまう簡便な意思決定「ヒューリスティック」の典型。(※詳細はこちら⇒https://nikkan-spa.jp/300236) 「詐欺師は不安を煽り、その解決策を提示するなど心に揺さぶりをかけて、相手が理性的な判断を行えない状態にしてしまうんです」 加えて、詐欺師は相手の弱みに徹底的につけ込む。SNSに公開された個人情報は利用される可能性も大だ。 「生年月日やその日の行動、趣味、交友関係も公開されたSNSは詐欺師にとって最高のデータバンク。ニセ霊能師がその情報をもとに悩みを言い当て信頼を勝ち取り、高価なものを売りつける詐欺なども、容易にできてしまいますからね」  人は信頼される人間でありたい、人を裏切りたくはないという習性があり、それを詐欺師は悪用する。「いい人であろうとすればするほど、ダマされやすいというパラドクスがある」。  では我々は詐欺に遭わないためには何に気をつければいいのか。 「まずは誰もが簡単にダマされることを自覚する。そして自分が押しに弱いのか、権威に弱いのか、不注意でダマされやすいのかなど弱点を自覚し、それを克服するトレーニングを行うことです。そして怪しい人や集団には近寄らない。会ってしまえば、断ることは、より困難になります。『君子危うきに近寄らず』を心がけてください」 ◆心理誘導テクニックあれこれ 【確証バイアス】 ◆オレオレ詐欺のなりすまし電話の声を本人と間違えてしまう あるひとつの考えや仮説を抱くと、それが「正しい!」と示す証拠ばかりを重視して、かつ、それを肯定する情報ばかりを収集してしまうこと。こうなると、おかしな点、矛盾点には気づかなくなり、他者の指摘も聞き入れられなくなる。先入観が変えられない原因となる認知のゆがみ 【ローボール技法】 ◆無料の集まりに参加させ最後に物を売りつける「無料商法」など キャッチボールで最初は弱い球を投げ、徐々にボールの勢いを強めると受け止めやすいように、認めやすい提案からはじめ、徐々にハードルの高い提案をしていく技法。破格の安値で車を販売し、オプション装備を勧めて販売価格を釣り上げる手法もこれにあたり、日常の商売や交渉でも使われている 【後悔回避】 ◆ダマされて買わされた商品のいい面ばかりに目が奪われてしまう 人には自分のとった行動を自己正当化したい心理があり、後悔しそうなシーンを無意識的に避けようとする。後悔したくないために、何げなくとった行動を止められず、まして、少なからぬカネや時間を使った場合はさらに次のステップにも進む。これを「一貫性」「コミットメント」という 【返報性】 ◆親身になって話を聞き、その後のセールスを断れなくする 他人から一方的に何かをしてもらいっぱなしだと居心地が悪く、「お返しをしなくてはならない」という気持ちになること。小さな貸しで大きな見返りを得ることもできる交渉テクニックでもある。無料で提供することで「商品を買わなきゃ」と思わせる、スーパーの試食などもこの心理を利用 【ハロー効果】 ◆市役所や消防署職員を装って消火器を押し売りする「点検商法」 地位や身分、称号、肩書といった、ある人物の目立った特徴に引きずられ、ほかの特徴や全体についての評価を高く、あるいは低く歪めてしまう現象。有名人を起用したCMで商品価値を高く見ることなどがこれにあたり、広告業界では古典的手法。ハローとは、「後光が差す」の「後光」の意 【保有効果】 ◆ 「効果がなければ全額返金」は、ローボール技法と保有効果のあわせ技 一度、「自分のモノ」となったものの価値は高まり、手放したくなくなる心理現象のこと。手放すときに2倍以上の値段をつけたり、交換の提案にも応じにくくなったりする。通販での試供品の提供や「使ってダメなら返品OK」といっても返品する人が少ないのはこの効果のため <西田公昭氏> 立正大学心理学部対人・社会心理学科教授。詐欺、悪質商法の実例をもとに人間の信じる心のプロセスを研究。著書に『だましの手口』など 取材・文/田山奈津子 古澤誠一郎 鈴木靖子(本誌) ― 「おいしい話にダマされた!」最新被害報告【8】 ―
だましの手口

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