成功セミナー・教材で400万円をカモられた男
架空の投資話や訪問販売など、悪質業者の被害は後を絶たずニュースを賑わしている。しかし、多くの人は思うだろう、「なんで、ダマされるの?」「ダマされるほうがバカじゃないの?」と。が、悪質業者も巧みだ。新たな詐欺手口は日々増え続け、我々の虚をついてくる。そこで、SPA!では業者の変わらぬやり口、新たな手口を、加害者・被害者の立場から紹介。悪質商法から身を守るヒントにしてもらいたい
【私はこうしてダマされた】
◆仕事への悩みを抱えるなか、 「成功」という夢を抱かせられて
上司の命令でマグロ船に乗せられた経験を生かし、現在はマグロ船式職場活性プロデューサーとして活躍中の齊藤正明氏。その上司からは、理不尽な命令ばかりを受けたそうで、その悩みを解決するため、なんと、トータルで約400万円を自己啓発セミナーや教材につぎ込んだという。中には、150万円という法外な金額の教材も。
「その上司は小さなミスにも怒るのに、すごい早口で仕事の指示をして、メモを取るのも禁止する人で。そこで私は『自分がスキルが足りないんだ』と思い、自己啓発の音声教材の資料請求をしたんです」
すると業者から「直接会って説明をさせて下さい」と電話があり、齊藤さんはその会社へ足を運んだ。
「説明役の男性は、その教材によって、仕事力はアップし、お金持ちにもなれると説明し、成功者の事例も話してくれました。僕には彼が救いの神に見えました(笑)。そして教材の説明が終わり、最後に150万という金額が提示されたんです」
◆芋づる式のセミナー地獄でさらに250万円を消費
さすがに返事をためらったが、相手の説得法は巧みだった。
「『ここが成功者と失敗者の分かれ目なんです! 成功者に必要なのは決断。成功者は理解できないものにも決断を下します』と言われて。でも150万円は無理と言うと、『成功者はできないとは言いません。一緒にできる方法を考えましょう』と。まあ要するにローンの検討をという話ですが(笑)」
さらに「人間にとって一番大事な資産は何かわかりますか? 時間なんですよ。早く始めない意味がありますか? 今チャンスをつかまなきゃ!」と押され陥落。サインをしてしまう。が、このとき、「これで上司の指示にも応えられる」と思ったという。
「藁にもすがる気持ちでしたから。その教材は上司に乗せられたマグロ船でも必死に聴き続けましたよ。特に変化は表れませんでしたけど(笑)。しかもその後は業者からセミナーにも誘われ、参加したセミナーでまた別のセミナーに誘われ……とまずい循環が始まり、速読、ディベート、気づきの研修など、誘われるがままにさらに250万円ほど費やしました」
近年はセミナーも教材も一切利用していないが、今も業者から電話がかかってくるという。
「ダマされた経験も今では、僕の講演の鉄板ネタになりました。ダマされやすく断れない性格を変えるのは無理と諦め、その性格もネタに生きようと開き直っています。また何かに勧誘されたら? 断れない自信はあります(笑)」
【齊藤正明氏】
1976年生まれ。マグロ船式職場活性プロデューサーとして年間200以上の研修・講演を行う。近著に『マグロ船で学んだ「ダメ」な自分の活かし方』、『仕事は流されればうまくいく』など。
イラスト/岩井勝之
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