実録!タイの刑務所における日本人受刑者の日々
年間のべ110万人を超える日本人が訪れているタイ。タイのどこかしこにも日本人がいるわけだが、現在、タイの刑務所にも日本人受刑者が相当数いる。
タイの刑務所は懲罰施設であって更生施設ではないと言われる。劣悪な環境に押し込まれ、しかもタイの暑さで大変過酷なのではないだろうか……。
「今年8月の王女の誕生日の恩赦でかなりの人数が釈放され、この10年で初めて収容者が4000人を切りました。1畳くらいの広さに3人というときもありましたが、今では仰向けで寝られようになりました」
と語るのは、麻薬密輸の容疑で逮捕され、バンコクの隣の県にあるバンクワン刑務所に服役している日本人受刑者のT。同刑務所には’12年9月現在で少なくとも5人の日本人受刑者がいるという。
Tはタイの刑務所暮らしについてこう語る。
「外国人受刑者は労役が免除です。だから楽かというとそうではない。労役がない=労役による日当がもらえないということ。なので、生活費は自分で稼がなければいけないのです」
バンクワン刑務所はタイで唯一自炊が許された刑務所であるため、タイ料理に馴染めない外国人受刑者は刑務所内の売店で食材を買ったりするのが常だ。だが、購入には当然現金が必要になってくる。
受刑者の正統的な現金入手方法は先述した労役の賃金以外に、親族や支援者からの現金の差し入れとなる。外国人の場合は労役の賃金がないので、支援団体が付けばいいが大概は家族から見捨てられてしまうのが現実なのだ。
そこで登場するのが、刑務所内での「商売」である。手っ取り早いのは差し入れや所持品を転売すること。
「甘いものなんかは人気が高いし、タバコや切手などは現金同様に使えるので需要があります。切手は3バーツ切手を2枚で7バーツ、タバコは1箱58バーツをバラ売りで1本3バーツで売ることでわずかだけど儲けることができます」
ちなみに、この刑務所転売ビジネス、タイマフィアの受刑者などは仕入れルートも半端がなく、テレビ、携帯電話など当たり前。なんと麻薬まで手に入るという。売人は刑務所に入っても携帯で営業活動をして麻薬売買を外にいる子分に命令しているそうだ。
「私はこうして貯めた小銭で電気調理器具を購入し、差し入れで手に入ったカレールーや醤油を使って日本食を作って売りさばいています」
入所9年目(残りの刑期21年!)になるTの場合、その才覚と料理の腕によってうまく入り込めているが、外国人受刑者の場合、商売の才覚がないと生きていくのも大変なのだ……。
Tも「日本の刑務所より居心地は悪くない」というタイの刑務所だが、それも今年に入り陰りが見え始めた。小包や差し入れの食べ物などに麻薬が仕込まれていることが多いため、法務省や警察庁本部により外部からの差し入れが全面禁止とされたのだ。。
「おかげで刑務所の医務室では買えない喘息の薬まで入ってこなくなりました。商売もできないし、今ある薬が切れたら死んでしまいます」
Tは今年還暦を迎えている。タイでは麻薬関連の刑にはほとんど恩赦・特赦が出ない。国王嘆願も出しているというが、生きて刑務所を出られる公算は極めて小さい……。 <取材・文・撮影/高田胤臣>
髙田胤臣(たかだたねおみ)。タイ在住ライター。初訪タイ98年、移住2002年9月~。著書に彩図社「裏の歩き方」シリーズ、晶文社「亜細亜熱帯怪談」「タイ飯、沼」、光文社新書「だからタイはおもしろい」などのほか、電子書籍をAmazon kindleより自己出版。YouTube「バンコク・シーンsince1998│髙田胤臣」でも動画を公開中
髙田胤臣(たかだたねおみ)。タイ在住ライター。初訪タイ98年、移住2002年9月~。著書に彩図社「裏の歩き方」シリーズ、晶文社「亜細亜熱帯怪談」「タイ飯、沼」、光文社新書「だからタイはおもしろい」などのほか、電子書籍をAmazon kindleより自己出版。YouTube「バンコク・シーンsince1998│髙田胤臣」でも動画を公開中
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