アフター7にちょっと坐禅ができる寺
― ブームの[仏教プチ修行]をやってみた!【2】 ―
不安の多い世相の表れか、休日に仏教の修行体験を行う人が急増中! 信仰していなくても参加でき、手軽なストレス解消法としても大人気な“プチ修行”を厳選し、紹介する
【坐禅】
体験したお寺:曹洞宗大本山永平寺別院長谷寺(東京・西麻布)
◆アフター7にちょっと坐禅でも
会社帰りにちょっと坐禅でも、と寄りたくなる立地が魅力の、大本山永平寺別院長谷寺(西麻布)では「月曜参禅会」と称して、毎週月曜日の夜に坐禅会を行っている。
「会社員が仕事後に参加できるよう、この時間設定にしました。20~30代の若い方から上は80代までと、結構年代はバラバラです。一回の参禅会で70人くらい参加するうち、60人くらいはリピーターさんですね」
と、副監院の清水正法さん。この参禅会では、一回40分の坐禅後、堂内を静かに歩く“経行”を10分行い、10分休憩したのちに、もう1セット繰り返す。
「経行は“歩く坐禅”と言われています。曹洞宗では、経行のときも坐禅のときも、常に“何も考えない”で行います。もっと言えば、禅問答みたいですが、“何も考えない”ことすらも、考えないのです」
日々、何かと煩悩の多い中で暮らしている以上、長時間“何も考えない”のは困難を極めるのでは? そんなことできるの? と悶々とした気持ちを振り払うべく、さっそく坐禅を体験させてもらうことに。
◆頭をカラッポにして深呼吸、坐禅開始
まずは、みぞおち付近で左手を親指を中にして握り、その上に右手を重ねる“叉手(しゃしゅ)”にして、入堂。坐蒲(ざふ)に半跏趺坐(はんかふざ)(または結跏趺坐(けっかふざ))で坐り、手は法界定印の形にし、姿勢を整える。このとき、視線の位置は1m前方、下45度の方向に置く。大きく深呼吸をしたのち、体を振り子のように左右に揺らして、姿勢をまっすぐ落ち着かせる。そして、鐘が鳴ったらいよいよ坐禅開始。普段から落ち着きのない記者は、ものの5分で、今日の晩ご飯はどうしようかなど、頭の中が埋め尽くされた。
「思いというのは、自然と湧き上がるものなので、完璧に無の境地に達しようと思わないことです。例えば『お腹がすいた』と思いが湧いても、その思考を深めず、そのまま手放すのがポイント。また、全力で1回だけやるよりも、たとえ数分だけでも毎日継続してやるのが大事です」
普段、考えすぎて頭でっかちになりがちな人ほど効果が出そう。塵ひとつない心地よい空間で、背筋も心もシャッキリしたのだった。
【正しい座禅の姿勢】
写真では壁を背にしているが、曹洞宗では壁のほうを向いて坐る。坐る前に、坐蒲の前方を軽く潰しておく。背筋はまっすぐに伸ばし、あごをひき、肩の力を抜く。目は完全に閉じずに、細く自然に開く“半眼”の状態に。舌先を上あごの歯の付け根につけるようにして、口を閉じる。坐る前に、坐る場所に向かって合掌してお辞儀(=隣位問訊)をし、さらに、合掌の形は崩さず、右回りで後ろを向き、向かいの人にお辞儀(=対坐問訊)。そして、鐘が3回鳴ったら坐禅の開始
【足の組み方】
左の足を右の股上にのせ、その上から右の足を左の股上にのせるのが結跏趺坐。初心者にはやや組みづらいが、慣れると結跏趺坐のほうが長時間組みやすいのだそう。坐る前に、坐蒲の前半分をへこませておき、坐蒲の中心にお尻を置くようにして坐る。両膝とお尻の三点で、体を支える。写真ではわかりやすいように足を出しているが、本来足は衣で隠れる。結跏趺坐がうまくできない場合は、あぐらの状態から、左足だけを右の股上にのせる半跏趺坐にしてもよい。右足も左足も、深く曲げる。体がかたくても、比較的組みやすい
【手の組み方】
右手の指の上に、左の指が重なるようにして、両手の親指をくっつける。このときに、親指同士を押し付けたり、逆に離したりもせず、自然な状態でつけること。この形を、“法界定印”という。手の位置は、下腹部のあたりがベスト
坐禅中に集中がとぎれたら、合掌して警策で叩いてもらう。まず、「叩きますよ」の合図として軽く肩に警策を置かれるので、首を左に傾けて右肩をあける。そして警策で叩かれるのだが、思ったより痛くない
◆やってみたい人は
坐禅は曹洞宗や臨済宗などでできるが、宗派によって手順や考え方が異なる。今回体験した大本山永平寺別院長谷寺の「月曜参禅会」は毎週月曜日19:00~21:00に開催。初心者は丁寧に指導してもらえる。坐禅しやすい服装持参のこと(男女別更衣室あり)。参加費は100円、誰でも参加可能。詳細は電:03-3400-5232まで。
※各修行は宗派・寺院によって手法が異なります。体験希望者は事前に確認のうえ、参加を
取材・文/朝井麻由美
ハッシュタグ