着々と進む「国産エネルギー」開発
国産クリーンエネルギーはほかにもいろいろある。最もポピュラーなのは太陽光発電。余剰電力の固定価格買い取りや、住宅向け太陽光パネルへの補助金もあり、国内の累積導入量は’09年には前年比28%の伸び。電力各社も大規模太陽光発電所の建設に乗り出し、’20年までに計14万キロワットが導入される見込みだ。NEDOの予測では’30年までに最大1億3300万キロワットまで設備容量が拡大するという。NEDOを中心に、産学協同でのオールジャパン体制で「太陽光発電世界一」奪還プロジェクトが’10年度から5か年計画で実施されることが決定されている。
また、太陽光を鏡などで集めてつくった高温で水などを蒸発させ、蒸気タービンを回転させて発電する「太陽熱発電」は、東京工業大学の研究チームが高効率の太陽熱発電の実験施設を山梨県北杜市に建設することが計画されている。
森林大国である日本では、次世代エネルギーとしてバイオマス(生物資源)が期待されている。現在は319万キロワットの設備容量のうち、生ごみや家畜などのし尿を発酵させてのバイオガスや、建築廃材や木質ペレットなどを燃やしての発電が行われている。大阪市は城東区森之宮地区の生ごみや下水汚泥からバイオガスを発生させる実験を’11年度から始める。廃熱の活用も含め同地区で消費する全エネルギーの8割、1万世帯相当分を創出する計画だ。
そのほか、究極のエネルギーリサイクルと言えるのが「マグネシウム発電」。東京工業大学の矢部孝教授が研究を進めている。海水からマグネシウムを取り出し、それを燃やして発電する。そして残った酸化マグネシウムを太陽光レーザーでマグネシウムと酸素に分解、燃料として再利用するというもの。無尽蔵にある太陽光エネルギーを利用し、資源を循環させるという夢の技術だ。さらに、製錬、利用、リサイクルすべての過程で温室効果ガスを排出しない。高効率の淡水化装置と超高温レーザーの開発が、この技術を可能にした。
また、都会のエネルギーとしてピッタリなのが「音力・振動力発電」。音や揺れのエネルギーで発電するという技術で、当時慶応大学の学生だった速水浩平氏(現在、「音力発電」代表取締役)が発明した。仮に首都高速の下に振動力発電機をつければ、都内の全家庭の電力をまかなえるという。
この2つの発電技術はまだ実験段階だが、資源を外国に頼らない「国産エネルギー」は、着々と研究が進められている。
取材・文/志葉 玲 北村尚紀(本誌)
写真/石原 孟 富士電機 全国小水力利用推進協議会 共同通信社
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