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震災被害を[声高にアピールできない業界]の苦悩【その1】

震災から1か月半。未曽有の災害に遭い、壊滅的な打撃を受けてもその被害を訴えづらい業種がある。沸々とわき上がる自粛ムードや世間体という"見えざる風"に飛ばされまいと必死にしがみついている"被災者"の、か細い声を拾った!


被災地ソープ街
津波被害で配湯がストップ。
建物にも甚大な被害が出て再建には多くの困難が……



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「小名浜周辺は大打撃だ。すぐそばに壊滅した街があるから見てくれ」


 福島県いわき市小名浜の国道で地元住民に被害を尋ねると、こう訴えられた。海沿いを北上すると、地割れが激しくなり、道の端々に瓦礫の山が現れた。さらに進むと、わずかな鉄筋コンクリート製の家屋を残し、一面廃墟と化した地区が見えてきた。大半が巨大津波に破壊されてしまっており、街は不気味な静寂に包まれていた。


 避難所から変わり果てた我が家に遺留品を探しに来たという60代の男性が、瓦礫をせっせと片付けながらこう言った。


「600世帯のうち、残っているのはわずか40~50世帯ほど。家も逃げ遅れた人々も流されてしまった。ここは水産資源も豊富で、すぐ近くには歓楽街もある。よく遊びに行ったが、もう行けないな」


 その歓楽街とは17軒が軒を連ねる福島県最大のソープ街・小名浜である。同地区でソープランド「アイドル」を営む女性社長が街の現状を教えてくれた。


「壁が崩れ、道路は地割れ。もともと小名浜は地震の多いところですが、縦揺れと横揺れが激しく続いたのは初めてです。ソープ街はパニックになり、女のコや従業員が飛び出てオロオロしてました」


 すぐに大津波警報が発令、大勢が高台に避難した。港や駅を呑み込んだ津波は、海に最も近い老舗の「I」の1階を破壊、僅かに小高いこの店にも玄関先まで波が押し寄せてきたという。


再開にこぎ着けるも原発の風評被害が直撃


「ソープにお湯を供給する配湯会社があるんですが、お湯を作る機械が水没してしまい、配湯不可能になり営業ができなくなりました。震災後、1か月が過ぎた今、ウチを含めた4~5軒が県外からボイラーを取り寄せ、やっとのことで営業を再開できたんです」


 そう言いつつも社長の表情は曇る一方だ。震災の影響で福島県内のサービス業を中心にクビ切りが相次ぎ、その不満が”娯楽”であるソープ業界に八つ当たり的に押し寄せているというのである。


「道行く人からは『こういう状況で営業するのかね?』って非難を浴びました。でも、女のコはもちろん従業員にも生活があります。こういうときこそ我々がフラストレーションの捌け口として求められる、と言い聞かせて仕事をしてます」


 しかし、その力強い言葉とは裏腹に状況は悪くなる一方だという。


「震災前は近くの湯本温泉から、宴会後の夜9時頃、ソープに流れてくるお客さんもいました。でも今は放射能の風評被害で旅館はキャンセルが続出。長引く原発問題で宿泊客の回復は望めません。地元の常連さんが頼みの綱ですね」


 ひと口に福島といってもここは福島第一原発から50㎞も離れている。当然、避難区域でもなければ屋内退避指示も出されていない。


 この店で働く地元育ちのソープ嬢の怒りは頂点に達していた。


「国の話が変わるからこうなるんでしょ。もうお客さんは戻ってこないよ。ほんと国や東電の人をひっぱたいてやりたい」


 法律により壊れたソープは建て替えが不可。社長によれば数軒がすでに廃業を決めているという。


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壁が壊れたまま営業する「アイドル」。修繕業者は優先的に被災地区の
住宅地に入っており、なかなか修繕の見込みが立っていない











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