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純金自販機も! 石油王御用達の7つ星ホテルに泊まってみた

ケチって格安航空券で欧州方面にバカンスに出かけたばかりに、アブダビ(UAE=アラブ首長国連邦の首都)でストップオーバーするハメになった筆者。しかしドバイとは違い、これといった観光名所があるわけでもない。唯一、それらしいところは、王族や海外からの要人が宿泊するという7つ星ホテル「エミレーツパレス ホテル アブダビ(Emirates Palace Abu Dhabi)」だという。ホテルが観光名所? あまり気乗りしなかったが、やることもないのでこのホテルに泊まってみることにした。 このホテル、とにかく巨大だ。入口からホテルエントランスまでゆうに400メートル以上ある。遠くからでも一目でわかる、宮殿のようなホテル部分のほか、プライベートビーチ、2つの巨大プール、庭園を合わせた総敷地面積は100万平方メートルにも及ぶという。さらに専用ヘリポート、クルーザー停泊用の港、2500台収容の駐車場を完備している。客室数は394室で、エレベーターも90基あるというから恐ろしい。

これがエミレーツパレス ホテルだ!( منتديات على كيفك より)

到着したのは夜。このときラマダン(イスラム教徒の断食期間)だったため、大勢の現地の富裕層がホテルに集結していた。ラマダン期間中は日没後にしか飲食することが許されないので、夕食は宴会のごとく大勢で集まって食べるからだ。ホテルの車止めには高級車がズラり……フェラーリ、ランボルギーニ、マイバッハ、ロールスロイスなどなど。この国ではベンツやポルシェでさえ、貧乏臭く感じてしまう。

ホテルのエントランス。高級車がズラり

高級車の中から、アラブ風の衣装を来た石油王たちが、目の部分だけ開いた黒いベールを来た女性たち数人を従えて続々と下り、ホテルに入ってくる。この国は一夫多妻制だから、彼女たちはみんな妻なのだろう。 さておき、ホテルの中もとにかくデカい! フロントから客室まで10分以上歩く! 一番端にある客室だとフロントから15分はかかるだろう。ホテルの端から端まで歩くと、ゆうに30分はかかるかもしれない。メインフロア中央部にはイスラム様式の巨大ドームがあり、観光客や宿泊客が記念写真を撮っている。フロアや廊下にはホテルにある骨董ショップの陳列棚がそこかしこにあり、世界中の骨董品がこれでもか、というくらい並べてある(すべて値段がついている。数十万~数千万円のものまでアリ)。 廊下を歩いていると、びっくりするようなものに遭遇。「The Gold ATM」。つまり、純金の自動販売機! 現金やクレジットカードで小さい金貨や、ペンダントが買えるのだ。ちなみに、親指の爪ほどの大きさのパンダの絵が描かれた四角いペンダントのお値段は15万円前後だった。高いのか、安いのか、さっぱりわからない……。このATMは珍しいためか、興味津々に見つめる人も多かったが、実際に買っている人は皆無だった。

これが純金の自動販売機だ!

肝心の部屋も広くて豪華だ。一番安い部屋(8月中旬、ネット予約で1泊2万8000円)でも都内の高級ホテルのジュニアスイートくらいの広さだ。専用バルコニーに広々とした浴槽、キングサイズのベッド……。そして冷蔵庫のジュースは無料で飲み放題だ。この値段で、このクラスの部屋に泊まろうと思うと、先進国では3倍以上のお金を出さないといけないだろう。 こうして短期間の滞在を終え、ホテルをあとにした。滞在の感想に関して言うと、ただ広いだけという印象しか残らなかった。デザイン的にも、機能的にも優れているとは言えず、「贅の限りを尽くして建ててみました」という感が大きい。せっかくの巨大ホテルなのに気の利いたショップもなく、移動手段(ホテル内にカートがほしいところ)も不便で、機能性もよくない。 とはいえ、アラブを代表する高級巨大ホテルだけに、一度泊まってみて損はないだろう。ちなみに見学だけの観光客も多く、このホテルのスタッフは宿泊しない人でも暖かく迎えてくれるのでご心配なく。

だだっ広いロビー。こうした空間を延々と歩かないと客室には辿り着けない

取材・写真/バーナード・コン(本誌特約) 写真(一部)/منتديات على كيفك
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