更新日:2013年11月05日 18:24
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習近平体制の中国で「第二の文革」待望論が噴出

毛沢東 毛沢東生誕120周年を迎える中国で今、文化大革命の再来を予感させるような事象が相次いでいる。 「胡錦濤時代は、街中にあるスローガンは『痰は吐くな』『列に並んでマナー乗車』といったマナー向上を呼びかけるものが多かったんですが、最近ではそれらに代わり、文革期のプロパガンダを思わせるようなスローガンが、駅や広場などに掲げられています。曰く『共産党がいれば生活は安心』『社会主義のもとで躍進する生活』といった調子。人民解放軍の模範兵で思想的モデルである雷鋒のポスターも、過去に比べて頻繁に見かけるようになった。まるで時代が逆戻りしたかのようです……」  こう証言するのは、北京市在住の日本車メーカー勤務・内田義隆さん(仮名・43歳)だ。  また、『産経新聞』などによると、北京市と湖南省の共産党宣伝部が、管理下にあるメディアに、毛沢東の批判者として知られる改革派経済学者・茅于軾氏を取り上げないよう通達を出していることも明らかとなっている。  深セン市の日系メーカーに勤務する牧原健二さん(仮名・39歳)も、“異変”についてこう語る。 「最近、毛沢東を礼賛するかのような、文革期を彷彿とさせるレストランが相次いでオープンしている。どうやら営業許可が取りやすいようです。逆に、日本食をはじめとする外国料理店は、営業許可が取りにくいと言われています」  さらに広州市の日系運送会社に勤務する山下卓也さん(仮名・36歳)も、人民の間の「文革待望論」についてこう証言する。 「格差拡大に歯止めがかからないなか、貧困層には文革時代を懐かしむ声があるのも事実です。屋台で酔っぱらった農民工たちが『金持ちたちを下放(文革時の農村部での思想教育)しろ!』とか、『人民公社を復活させろ!』と叫んでいるのを見たこともあります」  文革の再来を予感させるようなこうした動きに関し、中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏はこう解説する。 「習近平が贅沢禁止令を打ち出した頃から、左傾化を懸念する声は囁かれていたが、具体的な動きが出てきているとなると、『いよいよか』という思いがする。習近平や李克強以下、現在の指導部の多くは文革世代で下放も経験している。こうした体験から、彼らは国が左向きに突っ走ったときの“怖さ”を肌で知っています。だから、指導部はバランスを取りながら、あえて少しだけ左に寄せて貧困層をなだめようとしているのではないでしょうか。特にスローガンに関しては、富裕層に対して富の再配分への協力を促すための要請にも見えます」  一方、文革の再来を牽制するような出来事も起きている。8月には『新京報』や『南方都市報』など、比較的自由な報道で知られるメディアが、元紅衛兵によるとされる懺悔の告白を相次いで特集。それらは、「文革を批判した実母を密告し、銃殺刑に追い込んだ」「教師など知識人階級に理由なく暴行を加えた」といった内容で、毛沢東を評価する習近平体制への批判ともとれる。  都市部の中間富裕層がもっとも恐れる「貧者の反逆」=第二の文革が本当に起これば、日本も無傷ではいられないだろう。 <取材・文/奥窪優木> 【文革グッズに高値が!】 文革への憧憬の表れか、ゆかりの品々が、高値で取引されている。資本主義を否定した毛沢東の教えとは矛盾するが……。 ●毛沢東語録 中国人がロンドンのオークションで落札したもっとも初期の「毛沢東語録」は、なんと約500万円という価格に ●切手 文革中は切手収集が禁じられていたため、レア物が多い。毛沢東の長寿を願う’70年代の切手は、約820万円に ●ポスター 状態のいいプロパガンダものは、コレクター垂涎の的。トウ小平を批判する内容など、レアものには数百万の値が ●紅衛兵の帽子 党から無料で支給された紅衛兵の帽子は、北京市の骨董品店などで3万円前後で販売されている。偽物も多いが ●毛沢東の胸像 最近製造した量産品であるにもかかわらず、アンティーク加工を施し、「年代物」として数万円で販売している 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた
中国のヤバい正体

この国を野放しにしていたら世界は崩壊する…

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