【電王戦タッグマッチ観戦記3】佐藤四段「ディープインパクトに乗った武豊さんの気持ち」

 8月31日、東京・六本木のニコファーレにて『電王戦タッグマッチ』が行われ、ニコニコ生放送にて生中継された。『第2回 将棋電王戦』で激闘を演じた人間とコンピュータが「仲直り」してタッグを組み、トーナメント形式で優勝を争うという。いったいどんな将棋になるのか注目のイベントであった。

⇒前の記事へ『三浦九段「GPS将棋が指せって言うからさ」』

◆第3局:▲佐藤四段&ponanzaタッグ – △塚田九段&Puella αタッグ

電王戦タッグマッチ

解説に日本将棋連盟会長・谷川浩司九段(右下)が登場

 第3局は、第2局と同じ「横歩取り」に。なかでも、より前例の多い形(△5二玉型)に進んだ。

「ちょっと戦型を間違えました。もっとPuella αが力を出せる形にしなきゃいけなかったですね。練習将棋で経験はあったんで、どうかなと思ってやってみたんですけど」(塚田九段)

「コンピュータは横歩取りの先手がかなり強いので、横歩取りになるなら受けようと思っていました」(佐藤四段)

 本局は序盤からずっと双方のコンピュータが先手の優勢を示していた。そもそも将棋は、先に1手多く指せる先手のほうが勝率が高く、プロ間ではおよそ先手53%、後手47%ほどと言われている。そして横歩取りは、元々ほんの少し苦しい後手が主導権を握るための戦法だ。

 横歩取りでは、後手が歩を1枚損するかわりに、先手は歩を取るのに1手損をする。これで元から先手にある得はなくなるので、後手から早い攻めをくり出し局面を難しくし、なんとか損した歩の分を解消してしまおうというのが主眼。しかし、選択肢が多い局面だとコンピュータの計算力が活きるため、その損がそのまま残ってしまいやすいのだろうか。

「どのコンピュータも基本的に後手の評価は少し悪いからと思ったんですけど、それが広がっちゃって、これはマズイなと」(塚田九段)

電王戦タッグマッチ

41手目▲3六飛の局面図(「日本将棋連盟モバイル」より)

 佐藤四段&ponanzaタッグが指した41手目▲3六飛は、解説の日本将棋連盟会長・谷川浩司九段も「おもしろい手ですね」とうなった1手。プロ棋士の間では見たことがない手だという。

「これはponanzaが示してくれて、なるほどと思ったので採用しました」(佐藤四段)

 佐藤四段は、第1局と同様にponanzaが最善と薦めてくる手より自分が指したい手を優先していたが、自分でも考えてみて良さそうだと感じたら採用するという柔軟な姿勢が功を奏したようだ。中盤以降も、先手がじわじわと差を広げる展開に。

「(46手目に)△2三銀ってどうでしたかね? Puella αが薦めてきて、ちょっと指せなかったんですけど」(塚田九段)

「ponanzaも△2三銀は出てましたけど、それは(人間なので)やってこないだろうと、開発者の山本さんに別の手を読むように操作してもらっていました」(佐藤四段)

「なんか1局やってるからか、うまくなってるね(笑)」(塚田九段)

 この対局後のやりとりにあるように、佐藤四段は自分の考えを山本氏に伝えて、事前にそのとき指している局面からかなり先を指定し、ponanzaに読ませることも行っていたようだ。これは、まさに人間とコンピュータのタッグである「アドバンスド将棋」のメリットをうまく活かした指し方だ。

電王戦タッグマッチ

途中から解説に森内名人も参加。タイトル戦でもなかなか見られない、永世名人有資格者2人の豪華な大盤解説となった

「1手勝ちのわかりやすい形になっちゃって。(相手にもコンピュータがいて逆転が難しいので)こういう展開にしちゃいけなかったですね」(塚田九段)

「(終盤かなり危なそうに見える形でも)全然平気な顔をして大丈夫だよって言ってくるからやってるだけで、実際どうなのか(自分で読んでいないから)わかってないですからね(会場笑)。読みも省けてるし、かなりお世話になってます」(佐藤四段)

 プロ的な直観でたぶん大丈夫だと思っていても、やはり人間なので、実は大丈夫ではなかったということはありうる。人間同士の対局ならじっくり腰をすえて見落としがないか確認するところだが、そこはコンピュータに任せればいいというのも、『電王戦タッグマッチ』ならではだろう。

 第3局は、そのまま寄り切って103手で佐藤四段&ponanzaタッグが勝利。タッグが息の合ったところを見せ、佐藤四段とponanzaがそれぞれ単体で指したときよりも強いのではないかと感じられる盤石の内容だ。ちなみに後日、佐藤四段のブログにアップされた「ディープインパクトに乗った武豊さんの気持ちが少しわかりました(笑)」という言葉も印象的だった。

電王戦タッグマッチ

感想戦を行う佐藤四段と塚田九段

「三浦先生と僕が普通に指して、僕が勝つと思う人はいないと思いますが、いまかなりponanzaと仲良くなってきてるんで(笑)。少しは食いつけるよう、がんばりを見せたいと思います」(佐藤四段)

 なお『電王戦タッグマッチ』終了後、Puella α開発者・伊藤英紀氏のブログに塚田九段とボンクラーズ(Puella αの前バージョン)の『第2回 将棋電王戦』の際の練習対局の棋譜が公開された。Puella αのソースコードも公開されているので、その筋の方向けに付記しておく。

⇒つづきを読む(http://nikkan-spa.jp/505150)

⇒【電王戦タッグマッチ観戦記1】
http://nikkan-spa.jp/505147
⇒【観戦記2】三浦九段「GPS将棋が指せって言うからさ」
http://nikkan-spa.jp/505148
⇒【観戦記4】人間とコンピュータの未来を考えさせられた一日
http://nikkan-spa.jp/505150

◆電王戦タッグマッチ|ニコニコ動画
http://ex.nicovideo.jp/denou/tag/
◆日本将棋連盟モバイル
http://www.shogi.or.jp/mobile/
◆サトシンの将棋と私生活50−50日記(佐藤慎一四段のブログ)
http://satosin667.blog77.fc2.com/
◆A級リーグ指し手1号(Puella α開発者・伊藤英紀氏のブログ)
http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/

<取材・文・撮影/坂本寛>

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