防災に関するアイデアを集めた展覧会で、自分だけのマニュアルを作る
デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で始まった。
「災害大国は、防災大国になれる」というキャッチフレーズのもと開催されるこの展覧会には、国内外の建築家、デザイナー、アーティストらが参加。神戸や東北をはじめ、インドネシア、タイ、フィリピンなどの被災地で行われているプロジェクトが紹介されている。
展示は「災害発生前」「災害発生後」「復興期」の3つに分かれている。
例えば、大洪水の被害を受けたタイでは、デザイナーや学識者たちのグループ「Design for Disasters」(http://www.designfordisasters.org/)が、身の回りのものを使って災害を乗り切るアイデアを募集。それらの展覧会を行うことで、人々の防災意識を啓発するというプロジェクトが行われているという。
⇒【写真】アイデアの一つ「ペットボトル浮き輪」 https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=519672
台風で多くの死者を出したフィリピンのミンダナオ島・ルソン島では、料理や縫製品、歌など、被災者たちが何かを共同して作り出すというプロジェクトが行われている。そのプロセスを通して悲しみを癒し、前向きに生きる力を引き出す。フィリピン人アーティストのアルマ・キント氏が始めたプロジェクトで、街の復興だけではなく心の復興も必要だということを教えてくれる。
心に目を向けた防災グッズとしては日本からのエントリーにも興味深いものがある。
たとえば日本の建築家がデザインした間仕切りシステム。災害時、避難所ではプライバシーの確保が難しい。そこで、安価でリサイクルできる紙管や段ボールなど「紙」を素材として用い、組み立て・解体が簡単にできるというもの。不安な被災者たちの精神的な負担を少しでも和らげられるような工夫が随所に施されているのだ。
⇒【写真】坂茂氏デザイン「Paper Partition System4」https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=519673
さらに、避難所や仮設住宅でのいちばんの問題は「収入がない」「することがない」ということ。
そこで誰でも参加できる「手しごと」をつくり、心のケアにもつなげる試みが「EAST LOOP」(https://www.facebook.com/EASTLOOP)。“東から繋がっていく”という意味が込められていて、被災地の女性たちにニット製のアクセサリーなどを製作してもらい、商品の売り上げを「支援金」ではなく「収入」として直接届けている。被災地においては、「働く」ことを通じて「誰かに必要とされること」は、時には現金収入よりも大切なことかもしれない。
このような、自由な発想から生まれた23のプロジェクトが展示されているのだ。
同展覧会をプロデュースした永田宏和氏(KIITO副センター長)はこう語る。
「各ブースには、プロジェクトに関する情報が書かれた“マニュアル”が置いてあります。これらを集めて最後にファイルにとじて、自分だけの“防災マニュアル”が作れるようになっています。そこにはプロジェクトの概要だけでなく、取り組んだ人々の想いや姿勢も盛り込まれています。災害で家族や家財、仕事を失った人々の深い悲しみと喪失感はどの国でも同じ。そして、その悲しみを救える手段にも国境はありません。彼らの想いに共感し、刺激され、これからも頻発するであろう災害に勇気を持って立ち向かう人々が増えることを期待しています」
会期中は、実用性やデザイン性に優れた防災グッズの販売も行われる。10月24日(木)まで開催。(11:00-19:00、休館日は10月15日(火)、21日(月)。入場無料) http://kiito.jp/schedule/exhibition/article/4882/
<取材・文/北村土龍>
現在、世界で最も自然災害が多発しているのはアジア地域。世界全体に占めるアジア地域の災害発生状況は、発生件数・被害額で4割、死者・被災者数は8割だという報告もある。そんなアジアの防災に関するアイデアを集めた展覧会「EARTH MANUAL PROJECT展」が兵庫県神戸市の
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