ライフ

狭い、清潔感なし…世界で最も“過酷”な交通手段とは?

 ガイドブックに載らない世界の“危険地帯”に突入し、修羅場を繰り広げることで知られる「日本一危険な旅行作家」・嵐よういち氏。  邪悪な現地人とのガチンコ対決、アジア人差別や犯罪に巻き込まれる様子が赤裸々に描かれた旅行本『海外ブラックロード』(彩図社刊)はシリーズを重ね、ロングセラーとなっている。  また世界のスラムについても詳しく、インドやアフリカ、南米などの多くのスラムで体当たりの取材を続けてきた。  そんな嵐氏がマダガスカルに初上陸。バックパッカーの中では「世界一過酷な交通手段」を使用したリポートをお送りする。 ◆過酷な移動手段、「タクシー・ブルース」
マダガスカル

タクシー・ブルースの積荷。重量超過気味だがそんなのは気にしない

 マダガスカルには『タクシー・ブルース』なる、世界で最も過酷な交通手段がある。国内には飛行機も飛んでいるが、バックパッカーや節約旅をしている人にとってはなにせ高すぎる。よって、タクシー・ブルースなる最悪な乗り物に乗らなければならないのだ。  この乗り物は値段が非常に安く、地元の人と交流が持てるなどのメリットがあるものの、なにせ車両自体は単なるワゴン車。その狭いワゴン車に身動きできないくらいまで押し込められるわけで、当然ながら清潔感もなく、過酷な修行のようである。  そんなタクシー・ブルースに乗ってモロンタバー⇒アンチラべ間11時間の行程を移動するという旅に、モロンタバという街で知り合ったユウジさんというバックパッカーとともにチャレンジしてみた。料金は25万アリアリ(約1200円)だ。 ⇒【画像】超過酷な旅の写真リポートはコチラ
https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=530119
マダガスカル

車内はギュウギュウ詰め。狭すぎてカメラを取り出すのも一苦労だった

 まず、前日にタクシー・ブルース乗り場にチケットを買いに行くが、呼び込みがしつこい。もし彼らについて行くと手数料を取られてしまうから要注意だ。  呼びこみを無視してチケットオフィスでチケットを購入すると、ノートに書かれた雑な座席表を見せられる。そこの空いている席に自分の名前を書くのだが、11時間の長旅、席取りは一番重要である。過去に数回乗車したことがあるユウジさんによると、一番いいのが助手席2つ。だが既に埋まっている……。その次が窓側である。そこに前後、俺らは名前を記入した。 ◆何もない林道で止まったと思ったら小便タイム  当日は朝9時に出発予定だったのだが、結局、出発したのは10時であった。1時間~2時間遅れるのが“普通”らしい。この炎天下で休憩所がないのはなかなかしんどい。  座席に乗り込み、車は発車したがサブバッグを前に抱え、身動きが取れない。ワゴン車の後部座席4×4に加えて助手席に2人と、乗客は18人である。観光客など俺ら以外には乗っていない。  出発して1時間程でなにもない林道で車は止まった。  すると乗客がどんどんと降り始めた。なんだろう?と思っていると、皆、小便をし始めた。俺もつられてやる。どうやらトイレに行きたくなったらドライバーに伝えれば止まってくれるらしい。そんなことより、女性も堂々と小便しているのには驚いた。思わず目をそむける。1人、若い女のコは草むらで用を足している。  トイレ休憩後、俺は眠くなってウトウトしてしまったが、隣の男にすぐに当たってしまい、睡眠を妨害される。とにかく狭い。なんという狭さであろうか。体を動かすスペースがないし、乗客のなんとも言えない体臭も気分を悪くさせる。  出発して5時間で食事休憩があった。小汚いドライブインみたいな場所で適当に食べるのである。俺はこの時既に、腰も足もパンパンになっていた。  簡素な食事休憩を終えて出発したと思ったら、小さな村の前に人だかりが出来ていた。  中年の白人男性の乗った乗用車が縁石に乗り出したようだ。それを皆で力を合わせて車道にだしたりなんかしているうちに時間はどんどんと過ぎる。外は炎天下で暑くて仕方ない。
マダガスカル

前を走る車が溝にはまった。

 1時間、そんなこんなで再び出発し、夕方5時半を過ぎると辺りは暗くなり、気温が下がってきた。  アンチラべという街の近くにくると標高が高い為か寒くなり、おまけに大雨が降ってきた。もうやってられねえ。早く着かないかと祈るばかりだ。アンチラべの街に到着したのは夜10時半であった。雨は止んでいた。 <写真・文/嵐よういち>
旅行作家、旅行ジャーナリスト。著書の『ブラックロード』シリーズは10冊を数える。近著に『ウクライナに行ってきました ロシア周辺国をめぐる旅』(彩図社)がある。人生哲学「楽しくなければ人生じゃない」
海外ブラックロード スラム街潜入編

潜入して見えてきた現実とは!?

おすすめ記事