「ラブホ代わりに使う客も」ホテル経営の紆余曲折、3年半の海外放浪後の仕事ぶり
海外を長期間放浪していたバックパッカー。この言葉に憧れを抱く人もいるかもしれないが、何年も日本を離れ、旅生活が染みついてしまうので、現実としては帰国後に苦労している人が多い。一般社会の感覚がわからなくなり、“カタギ”に戻るのには相当の時間がかかる。
先日、某所にあるハルさんが経営するホテルを訪れた。ハルさんは部屋の掃除と洗濯を終えたばかりみたいだ。
「掃除と洗濯で5時間はかかるんですよ。シーツやバスタオルなどの洗濯が大変です。ずっと予約が埋まっていて、今日お客さんがチェックアウトして、明日また新しいお客さんがくる。ちょうど今日は誰も入らない日なんですよ」
長く旅をしてきた人の特徴としては、実年齢よりも若く見えることだ。ハルさんも30代なのだが、20代にしか見えない。
4LDKの間取りで、3つの客室にはそれぞれベッドが2つずつあり、和室もあるようだ。玄関には「避難口」を示す緑の案内板があり、これは法律上つけないといけないらしい。また、防犯上の理由で監視カメラもつけている。
ところで、ハルさんはいつからホテルを始めようと思っていたのか?
「バックパッカーも当然、“旅の後のこと”を考えるようになります。もちろん、そうではない人もいますが、旅の間、時間はいくらでもあったので僕はいろいろ考えていました」
多くのバックパッカーがゲストハウスなどの宿経営を一度は考える。それは筆者も同じ。
各地のゲストハウスを泊まり歩いた経験から、“自分だったらこうしたい”というアイデアが出てくるからだ。それを実現させている人も多いが、決して簡単ではない。
「最初は僕もゲストハウスにしようと思っていました。ここは父親が所有する物件なのですが、住宅街なので、ゲストハウスだと騒がしくなってしまって、近所にも迷惑かかるだろうし、だったらホテルにしようと思いました」
どこで何をやっているのか、次第に連絡がつかなくなってしまうこともあるわけなのだが、筆者(嵐よういち)と交流があるハルさんという男性は、3年半にわたって世界を放浪していた。帰国後はホテルの経営を始めたが、同時期にコロナ禍が訪れる。紆余曲折ありながら、現在はうまくいっているのだとか。そこで今回は、詳しい話を聞きに行った。
連日の客入りで「掃除と洗濯だけで5時間はかかる」
バックパッカーならば誰もが一度は夢見る宿経営
旅行作家、旅行ジャーナリスト。著書の『ブラックロード』シリーズは10冊を数える。近著に『ウクライナに行ってきました ロシア周辺国をめぐる旅』(彩図社)がある。人生哲学「楽しくなければ人生じゃない」
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ