かつて、お釈迦様が悟った“中道”は、苦行や快楽主義に走ることなく、目的にかなった適正な修行方法をとること。何事も程よさが肝心なわけで、それは自動車業界も同様です。燃費至上主義はわが国だけ。世界では、ほどよくスポーティで燃費がよいダウンサイジングターボが主流に。今や韓国にすら負けそうな日本のエンジン研究の現状をリポートします!
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
望月浩彦=撮影 Photographs by Mochizuki Hirohiko
◆韓国にも劣る!? 世界の主流技術で出遅れた日本のエンジン研究

今回のオートクラブは、エンジンのお勉強をします。勉強が苦手な人は読まないでください。
先日、国産自動車メーカー8社+研究機関が、共同でエンジンの基礎研究を始めると発表した。これは、日本の自動車業界の危機感の表れだ。
直近の商売のことを考えれば、エンジン技術は世界一でなくてもいい。たとえば韓国の現代グループは、技術で世界のトップを走ってる部分はない。元は三菱にエンジン技術を供与され、それを発展させただけ。近年はアウディなどから一流デザイナーをヘッドハンティングし、一流のデザインを纏わせて日本車より少し安く売っている。これでズンズン世界でのしてきたのだ。別にすべてのユーザーが技術的に世界一のクルマを欲しがってるわけじゃないので、悔しいがビジネス的にはありだ。
韓国企業のやり方はえげつない。家電業界はこれで完全にやられた。しかし日本人にはプライドがある。盗泉の水は飲まず! 今回の産学共同研究はその表れだろう。
しかしそれ以前に、日本のエンジン技術には、致命的に遅れている分野がある。と言うより、日本の3大メーカーのトヨタ、ホンダ、日産は、ハイブリッドや電気自動車に力を集中しすぎたかもしれない。日本の若い研究者は、「エンジンなんて、そんなのもうすぐ終わる技術っしょ?」と研究したがらないと言うが、ハイブリッドは恐らく世界の主流にはならずに終わり、電気自動車が主流になるのはたぶん20年後。やっぱりクルマはまだ当分エンジンなのだ!
このエンジン研究の分野で、日本勢が最も遅れているのがディーゼルで、頑張ってるのはマツダくらい。ガソリンエンジンではダウンサイジングターボが弱く、まだ本命と言えるようなものは作られていない。
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スバル・レヴォーグ。6月発売。1.6リッターターボモデル(170馬力)は、プロトタイプ段階ではやや物足りない感じだったが……
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スズキ・ハスラー。日本の軽ターボは究極のダウンサイジングターボだが、さすがにダウンサイジングすぎて世界の主流にはなれない
ダウンサイジングターボとは、小さなエンジンに高効率のターボを組み合わせてパワーと燃費を両立させる技術で、この分野ではまず欧州が飛び出し、いつのまにかアメリカにも先を越された。そして世界の自動車エンジンの主流になりつつある。
2年前には韓国の現代も、「ヴェロスターターボ」なる1.6リッターのダウンサイジングターボ車をリリースしている。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=655359

現代ヴェロスターターボ。1.6リッターターボで201馬力。メガーヌ的でかっこいい。燃費もスペック上は欧州勢にそれほど劣らない。うーむ
韓国車にまで負けたら真剣にヤバいだろ! ということで、前置きが長くなりましたが、今回は日本の国益のために、ダウンサイジングターボで先行しているBMWの新型ミニを見て、お勉強しようというわけです。
⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/651753
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『
そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『
首都高速の謎』『
高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。
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