美しすぎると話題のカンフー美女・山本千尋を直撃
3歳の頃、ジャッキー・チェンのファンだった母親の影響で武術太極拳の世界に入り、2012年、16歳のときにマカオで開催された武術太極拳の世界ジュニア大会に出場。素早い足技や跳躍を駆使して金メダルを獲得、世界チャンピオンとなった山本千尋さん。「夢はジャッキー・チェン、ジェット・リーのような世界的に活躍するアクションスター」という彼女は、その第一歩として、現在上映中の映画『太秦ライムライト』のヒロイン役で映画初出演を果たした。同映画は「New York Asian Film Festival」でも公開。ニューヨークでの舞台挨拶を終え、帰国したばかりの彼女を直撃した。
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――アクション女優になりたいと思ったキッカケはなんですか?
山本:これまで自分のやってきた競技は、マイナーで誰も知らなくて、ときには「カンフー? 『アチョー』ってやつでしょ?」とかバカにされて……。恥ずかしくて肩身の狭い思いをしていたのが、世界チャンピオンになったあと、「凄い競技だね」、「映像見たけどかっこいいスポーツだね」って周囲に認められたのが嬉しくて、私が続けてきたことは間違ってなかったことを実感しました。同時に、この武術をもっと世間に広めるにはどうしたら? と考えたときに思いついたのがアクション女優になることでした。大先輩のジェット・リーさん(武術太極拳の世界大会を5連覇)がアクションスターとして活躍することで中国でのブームに繋がったように、私がアクション女優として活躍すれば、まだまだ日本ではマイナーなこの競技を広めることができる。それが一番のキッカケですね。
――2020年オリンピックの新競技の候補にもなりましたが、そもそも武術太極拳とはどういった競技なんですか?
山本:フィギュアスケートをイメージしてもらうとわかりやすいです。1分半~2分の時間で個々が演舞を披露し、演技点、跳躍などの技術点、総合的な表現力を加味した採点競技です。「誰かと戦っている」という設定なので、演舞中は常に殺気を持った目をして笑顔は一切見せません。それがフィギュアスケートとは違うところですかね。ジュニアの場合は演じる内容は決まっていて、練習の中で繰り返しているうちに、自分なりのかっこいいリズムっていうのが見えてきます。同じ動きをしているのにしなやかな動きをするコもいれば、力強い動きをするコもいます。
――金メダルを取った山本さんの持ち味はなんでしょうか?
山本:よく褒めてもらえるのは「表現力がある」ってところです。母の影響もあって、私もジャッキー・チェンさんの映画は、ほぼすべて観ているのですが、演舞中は、映画に出てくる悪党たちに囲まれて殺されそうなところに立ち向かっていく――というイメージを持って演技しています。たとえば、正面から向かってくる相手の股間を蹴り上げて倒し、背後の敵の腹部を肘で打って動きを止めて、首を絞めるって感じです。言葉にすると物騒ですね(笑)
――話しているときの表情とのギャップが凄いです。
山本:私服のときは16歳の普通の女のコですよ。休日に友達とショッピングしたり、好きなアイドルの話で盛り上がるのが大好きです。ただ、道着を着ると一気に戦闘モードに切り替わるんです。撮影のときも、よく「笑顔で」とか注文されるんですけど、それは出来ないというか。やはり「自分は武術家なんだ」という意識は強いです。
――さて、『太秦ライムライト』では殺陣も経験して、いよいよアクション女優としての第一歩を踏み出しました。
山本:初めてのお芝居に向けて、「メソッド演技法」という役柄の内面に入り込む演技技法を徹底的に稽古しました。成果が出たと感じたのは、涙を流すシーン。武術では目を殺気立たせてばかりの自分が、演技の中で泣けるとは思ってもみなかったので、それが出来たのは嬉しかったですね。
――アクションシーンはどうでしょう。武術で培ってきたことは殺陣でも生かせたのでしょうか?
山本:武術では「誰かと戦ってる」ことをイメージはしているのですが、実際には一人で演舞しています。練習中は少しでも人が入ってくる気配を感じると「危ないっ」と思って演舞を止めてしまうくらいくらいですから。それが殺陣では、自分が剣を振るう射程内に相手がいて、そこに向かっていく。当たり前の話ですけど、これがアクションなんだって身にしみてわかりました。
――主演の福本清三さんは、実際に「5万回斬られた男」として知られるプロの斬られ役です。たとえば福本さんと松方弘樹さんの殺陣のシーンを見て、どんな印象を持たれましたか?
山本:タイミング、呼吸、スピード、どれをとっても達人の領域で、そのうえ、お互いに自分の型をアドリブで付け加える余裕もある。改めて、プロの役者っていうのは凄いなと。私は殺陣をなぞるのが精一杯ですから。あと、これは映画のテーマでもあるのですが、今まで私が観てきたアクション映画の概念が丸ごと引っくり返りました。主役の演技を光らせるのは、脇役の人たちの演技があってこそなんだと。それは殺陣に限った話ではなく、ジャッキー・チェンさん、ジェット・リーさんのカンフー映画も同じで、「やられ役がいるからこそ、主役のアクションがかっこよく見える」というのを知って見方も変わりました。初出演の映画でこの作品に出会えたことが、何より嬉しいですね。
――日本映画のアクションシーンといえば、時代劇の決闘シーンがメインです。やはり、いずれはカンフー映画をはじめとした、さまざまなジャンルのアクションに挑みたいという気持ちは強いですか?
山本:はい。夢は世界で活躍するアクション女優です。それに向けて現在は、リバーハリウッドという養成所で、英語での台詞、演技のレッスンを受けています。もちろん、ジェット・リーさんが俳優になっても鍛錬を続けているのを見習って、武術の練習も継続していこうと思っています。繰り返しになりますが、アクション女優としての成功と武術の発展は、どちらも切り離せないものですから。
You tubeなどに公開されている彼女の演舞を見れば、それがいかに常人離れした動きで、並大抵ではない鍛錬のうえに確立されたものであるかはおわかりいただけるであろう。不退転の決意と惜しまぬ努力で夢を追い続ける、未来のトップスターの今後に注目していきたい。 <取材・文/スギナミ 撮影/丸山剛史>
【山本千尋】
やまもと・ちひろ 1996年8月生まれ。兵庫県神戸市出身。身長155cm。武術歴12年。2012年「第4回世界ジュニア武術選手権大会」、「槍術」で金メダル、「剣術」「長拳」ではそれぞれ銀メダルを獲得。『太秦ライムライト』で映画初出演。『新撰組オブ・ザ・デット』(2015年春全国公開予定)でヒロイン役として出演
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