「スカイライン」のエンジン音、実はスピーカーから出る偽音!?
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
いわゆるメルセデス・ベンツというのはブランド名であって、クルマを作っている会社はダイムラーと申します。そのダイムラー社と日産自動車が提携して誕生したのが、今回のスカイライン200GT‐t。北米を中心に販売するインフィニティQ50にベンツ製のエンジンを積みました。なぜ、昭和の若者が愛したスカイラインがこうなった? その理由を、超合理主義経営者の視点から解説します
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
池之平昌信=撮影 Photographs by Ikenohira Masanobu
◆ベンツ製のエンジンを積んだスカイラインに乗ってみた!
⇒【前編】はコチラ
なぜ日産は、ベンツのエンジンのような地味な肝っ玉エンジンをわざわざ買ったのか?
それは、このエンジンが2リットルの直噴ターボだから。つまり日産もルノーも持ってない種類のエンジンだからなのである。
「持ってなけりゃ作ればいい!」というのが日本古来の精神主義だが、そこはガイジンらしく、合理的に自前で開発するより買ったほうがトクだと判断した。こういうのは海外の自動車メーカーでは当たり前で、BMWだって小型ディーゼルはプジョーから買っている。
なぜ買ったほうがトクなのか?
メイングレードじゃないので、新規でエンジンを開発したら、お金と時間の無駄という経営判断だ。
スカイライン、じゃなかったインフィニティQ50は、9割近くを北米で販売するが、アメリカ人はまだ大排気量マルチシリンダーが好き。小排気量のダウンサイジングターボが世界の主流になりつつあると言っても、まだ“なりつつある”だけで、北米の主流は相変わらずデカいエンジンだ。スカイライン、じゃなかったQ50のエンジン別販売比率は、ざっくりこうなっている。
●3.7リットル V6 50%
●2リットル直4ターボ(ベンツ製)25%
●ディーゼル(ベンツ製)15%
●ハイブリッド 10%
あ、ディーゼルもベンツ製か……。日本で買えるのはハイブリッドと2リットルターボだけだけど。まあとにかく、自動車業界はエンジンの取り換えっこが当たり前になっている。トヨタもBMWからディーゼルエンジンを買うことだし。
このスカイラインのベンツエンジン、日産独自のチューニングもされている。燃費が少し良くなるリーンバーンは値段が高くなるからヤメ。そしてサウンドも工夫してあり、スポーツモードにすると、「コワ――ン」という気持ちいい音が響くのだ。さすがスカイライン! と思ってクルマを降り、道路脇で耳を澄ましたが全然聞こえない。不思議に思って日産の人に聞いてみました。
「あれはオーディオのスピーカーから自動的に流れる合成音です」
そ、そうだったんスか~~~!?
まさに合理主義。今度のスカイラインは意外とやるな!
【結論】
ハイブリッドモデルより80万円安いし、全体の仕上がりも2リットルターボのほうが良かったです。だからといってスカイラインをオススメするわけではありません。少し足せばBMW3やメルセデスCクラスが買えるので。
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