自民圧勝ムードで、公明党の危機感とは?
いよいよ12月14日、衆院選の投開票日を迎える。全国的に厳しい寒さが予想されており、投票率がどこまで伸びるか気がかりなところだが、今回の12日間の選挙戦では、かなり早い段階で「自民圧勝」の空気ができあがってしまったことは間違いないだろう。
公示日直後の4日、全国紙朝刊が一斉に「自民単独300議席超す見通し」と見出しを打ったことで、選挙戦前から苦戦が予想されていた野党は、各陣営とも一気にトーンダウン。「自民党に300議席も与えてしまったら安倍政権の暴走がさらに加速してしまう!」と訴える以外に、終盤戦を乗り切れないほどのダメージを受けた格好だ。
だが、自民圧勝ムードを疎ましい目で見ていたのは何も野党陣営に限ったことではない。同じ連立与党のパートナーである公明党も、かなりの危機感を抱いているようだ。全国紙記者が話す。
「『自民300議席超え』の報道が出てから、公明党のなかには、自民党がそんなに勝ってしまったら連立のパートナーとして存在意義そのものがなくなってしまう……との焦りが広がっています。かつて党代表も務めた太田昭宏国交相が立つ東京12区では、落下傘候補の田母神俊雄氏(次世代の党)が声高に『ヘビのように体を巻き付けて自民党を動けなくしている』『公明党をぶっ潰せ!』と自公の間に楔を打ち込もうと気焔をあげていましたしね。だから、公明党の陣営のなかにはあの300議席報道後、自民党候補者の演説会にスタッフを紛れ込ませて、『比例は公明党に!』と候補者が何回言っているか確認させている者もいた。つまり、パートナーの公明党ですら今の自民党圧勝ムードにナーバスになっているのです」
公示前の勢力は自民295に対して公明31。「3分の2」のラインが317議席なので、自民党がこの数字にどこまで迫れるかが焦点となってくるわけだ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が続ける。
「自民党は結党以来、憲法の自主的改正を党是として掲げてきた政党であるため、選挙において3分の2という数字は重要になってくる。とはいえ、悲願の9条改正を巡っては、『平和の党』を標榜する公明党が首を縦に振ることは考えにくい。この点、次世代の党がもっとも近いですが今回議席を大幅に減らしそうなので期待できない。ただ、改正論者は民主党のなかにも、維新のなかにもかなりの数いるわけで、今後、長期政権の総仕上げとして憲法改正に着手したら、どういうかたちで“再編”が起きるかわからない。公明党としては、『自民圧勝』をうかうか見てられないというのが正直な気持ちでしょう」
憲法改正は、言わずもがな衆参両院の総議員の3分の2以上の賛成がなければ発議できない。現在の参院の勢力は総議員242に対して自民114。まだまだ遠く及ばないものの、今回の衆院選で「自民単独300議席超え」が実現したら、次の参院選がおこなわれる2016年の前に連立与党内で激しいバトルが繰り広げられるのは間違いないだろう。 <取材・文/山崎 元(本誌)>
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