ロックバーが普及しているのは日本だけ!? 外国人を魅了する意外なクールジャパン
壁を埋め尽くすアーティストのポスター、所狭しと並べられたレコードやCD、そして大音量で流れるロック……そんな音楽ファンにはたまらない夢の空間がロックバーだ。もはや日本の音楽好きにはおなじみだが、実は外国人客の姿も多い。いったいなぜ日本にいながら洋楽のかかっている店に行くのか話を聞くと、意外な答えが返ってきた。
◆外国人を魅了する「メイド・イン・ジャパン」のロックバー
それは欧米には日本にあるようなロックバーがほとんどないというもの。「海外では仲間と集まって、浴びるように酒を飲みながら音楽を聴いている」というイメージを抱いていたが、バーでの音楽環境は日本のほうが上なのだ。その背景には営業時間や物価、社会環境の違いなど、さまざまな理由があるという。
「音楽を聴くならクラブに行く人が多い。ただ、流行の曲とかクラブミュージックばっかり流れるから、ロック好きはあまり楽しめないね。値段も日本の倍ぐらいするし、閉まるのも早いから、日本にあるみたいなロックバーを作るのは無理だと思う」(ノルウェー)
「バーで激しい音楽をかけるとすぐ喧嘩になる(笑)。日本はどこも安全だから、バーで盛り上がっても揉め事にならないよね」(アメリカ)
また、欧米では自宅でホーム・パーティーが開ける、店舗スペースが広いといった利点があるため、そもそもロックバーへの需要が少ないという理由もあるようだ。
「バーで音楽を流すというより、(日本でいうライブハウスのような)ゆったりした店でバンドが生演奏をするところのほうが多い」(メキシコ)
「自宅でも大音量で聴けるから、わざわざ外に飲みに行かない。ラジオの音楽番組をかける店とか、『ロック・レストラン』みたいなチェーン店しかないしね」(ポーランド)
店内の雰囲気や流れている音楽は洋風でも、ロックバーという営業形態が普及しているのは日本だけ。旅行者にとっては観光スポット、在日外国人には憩いの場となっているのだ。もちろん、外国人客が訪れる理由はそれだけではない。
「それぞれ内装とかお店の雰囲気にこだわっていて、居心地がいい。ジャンルに特化しているから、長時間好きな音楽だけ聴き続けられるし、何軒まわっても飽きない」(ノルウェー)
「みんなで歌ったり、エアギターができてカラオケみたい! 店員さんもいい人ばかりで、いろんな人に紹介してくれるから日本人の友達もたくさんできた」(フランス)
豪快な音楽が流れるいっぽう、外国人客には装飾や選曲、接客法の細やかさが評価されているようだ。
◆店側も外国人客の受け入れに積極的
しかし、音楽という共通言語があるとはいえ、コミュニケーションをとるうえでは苦労やトラブルも多いはず。迎え入れる店側は外国人客にどのような印象を抱いているのだろう? ロックバーがひしめき合う歌舞伎町で話を聞いた。
「迷惑なのはナンパ目的の人ですね。あとパワーがスゴいから、騒ぎすぎてお店の備品を壊す人もいます(苦笑)。でも、そういう人はごく一部で、ほとんどはマナーも気前もいい。美味しそうにお酒を飲んでくれるから大歓迎ですよ。海外バンドの最新情報や現地のトレンドなど、勉強になることも多いです」(Bar- PSY・YUKIOさん)
「外国人のお客さんは元気がいいから、店がにぎわいますね。ただ、私は英語が話せないので、身振り手振りを交えてコミュニケーションをとることが多いです(笑)。英語を話せるスタッフもいますが、訛りが強い国もありますし、なかなか難しいですよね」(FROM DUSK TILL DAWN・ROMIさん)
ただでさえ、大音量で音楽が流れている空間。ましてや相手に酒が入っているとなれば、コミュニケーションをとるのは至難の業だ。そこで歌舞伎町では近隣の店舗で協力し合い、英語の勉強会も開催されているという。
こういった積極的にコミュニケーションをとろうとする姿勢は、「店員が音楽に詳しいから会話も楽しめる」(フィンランド人)と、外国人客にも大好評! ロックという海外文化と、行き届いた「オ・モ・テ・ナ・シ」や細部までこだわったわび・さびが融合したロックバーは、まさに外国人にとってのクールジャパンなのだ。 <取材・文/林バウツキ泰人>
※取材協力
●Bar-PSY http://www.bar-psy.com
●Bar FROM DUSK TILL DAWN Shinjuku http://www.f-d-t-d.com/schedule/index.cgiライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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