欧米では交際までにセックス込みの「お試し期間」がある。複数人と同時並行もOK
週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」からの、劇作家の鴻上尚史が送る恋愛後押しコラム特選。3本立ての最後は、2013年に発売された『不安を楽しめ!』から。ちょっとうらやましい、「交際スタート」までの海外事情を。
◆恋愛のはじまりとデイティング・ピリオド
ここんところ、「cool japan」がブームだという話しを書いていますが、番組で「恋愛」を取り上げたときのことです。
「具体的につきあうことを決めるのはどういう時ですか?」という交際の始まりの質問を外国人にしました。
日本人の場合は、集団で会った後、二人きりで2~3回会った後に、交際を始めるかどうか決める、というのが平均的なところだと思います。個人的に10回近く会っているのに、交際を決めないというのは、あまりないでしょう。
で、欧米人たちは、「dating period(デイティング・ピリオド)」を経て決めるという答えでした。
それはなんだ?と聞くと、「何回かデートをして、お互いのことを知ったうえで、交際するかどうか決める期間のことだ」と説明を受けました。
それは、日本も同じだと考えると、「このデイティング・ピリオドの間は、何人とデートをしていても問題はない。逆に、複数の人間とデートして、自分にぴったりの相手を見付ける時期とみんな考えている」と言われました。
つうことは、合コンとか集団で会った後、気に入った子が5人いたら、5人と同時並行にデートしてもいいってこと?と驚くと、「そうだ」と外国人達は頷きました。
それで他の四人は怒らないの?とさらに聞くと、「怒らない。自分も他の人とデートしてるかもしれないし」と当然のように答えました。
んでさ、その時期に、あれはどうなのよ、つまりは、どこまでのデートなの?とおずおずと聞くと、「だって、相手のことを知るためには、セックスは当然でしょ」と、スタジオの外国人達は、男女問わず平然と答えました。
「えっ、えっ、えっ、『デイティング・ピリオド』って、セックス込みなの!? 同時並行にデイティング・ピリオドのお試し期間だってことは、5人と××ているってこと!?」とNHK BS1の番組なので、「親密な関係」なんていうボカした表現を使いながら激しく驚くと、「だって、5人の中で誰かを選ぼうと思ったら、そうするしかないでしょう」と、ごく普通に外国人達は頷きました。
「じゃ、じゃ、じゃ、女性に聞くけど、この人いいなと思って、セックスしたのに、相手がデイティング・ピリオドで、他の女性を最終的に選んでも、怒らないの? やり逃げって責めないの?(スタジオではこの言葉はもっと上品に言い換えましたが)」と聞くと、「そういうものだから」と外国人女性たちは平然と答えました。
「なっ、なっ、なっ、なんてうらやましい文化なんだ! だったら、俺は一生、デイティング・ピリオドでいいぞ!」と魂の叫びを上げると、「そういう男性はいる」と、外国人女性は、冷静な顔で言いました。
その手の男性は、だんだんとそういう評判が広がってきて、恋愛の対象として、つまりはデイティング・ピリオドの候補としては、外されていくそうです。
この話を聞いて、僕はあることにピンときました。それはアメリカなんかに留学した日本人女性が、「エッチまでしたのに、捨てられた!」と嘆いているのは、あれはやり逃げではなく、デイティング・ピリオドだったんだ、ということです。
日本人はエッチをするというのは、交際の始まりを意識することが多いのですが(この人と交際してもいいと思うから、エッチするわけですね)、欧米では、エッチは、交際のスタートではなくて、相手を知る行為の始まりだということです。
デイティング・ピリオドはどれぐらいの長さなの?と質問すると、「多くて、7~8回ぐらいのデートの間からな」と、みんななんとなく答えました。1週間に1回デートしてれば、なんと2か月近くになります。毎日デートすれば、1週間です。
で、相手を決めた後はどうするの?という質問に、「ひとりに決めたら、他の相手には決まったよとメールする」という人やら、「なんとなく、他の人とは自然消滅する」という人まで、それはさまざまでした。
セックスは、極めてプリミティブなコミュニケイションですから、何回かするうちに、相手の本性が出ることが多いです。
そういう意味で、セックスを数回経た後に、交際するかどうかを決めるという文化は、マジメな意味でもエッチな意味でもありだなあと思ったのです。
はい。
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