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安倍首相は「GDP2期連続マイナス」でも増税するの?【経済ブロガー・山本博一】

連載18【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】GDPは2期連続のマイナスに! しかしなぜかスルーされる増税の悪影響 「ああ……公表されたのですか」  というのが正直な感想で、別に驚きもしませんでした。民間の予想通りの結果ですし、これだけ家計の消費が低迷しているなか(図1)、経済成長するほうがおかしいのです。 ⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=984890 家計の消費が低迷している まさに、なるべくしてなったマイナス成長です。  さて、なんのことか。政府が16日に発表した7-9月期GDP速報値のことです。4-6月期に引き続き、今期もマイナスとなってしまいました。  新聞各紙も2期連続のマイナス成長を報じていますが、その内容、評価には呆れてしまいます。  GDPが2期連続してマイナスとなった原因を、中国の景気の低迷や、第三の矢である「成長戦略」が不十分であるからとか、輸出の低迷、企業の設備投資の足踏みなど、取って付けたようなもっともらしい理由を並べ立てていますが、どの記事のなかにも「消費税」という3文字を見つけることはできませんでした(あったとしても昨年の消費税増税の出来事を単に書いてあるだけで、その影響についての言及はなし)。  ですが、もう一度図1のグラフを見て下さい。昨年4月の消費税増税以降消費が低迷し、回復する兆しが見えません。家計消費の水準は民主党政権時の頃に戻ってしまいました。  このグラフを見れば、今回のマイナス成長の原因は、昨年の消費税増税の悪影響であることは明らかです。普段ニュースを見ない、経済に明るくない一般の庶民でもわかるでしょう。経済記事を書いている新聞記者がこれを見落とすはずがありません。  それが、各紙揃いもそろって完全にスルーです。この国は「消費税増税を景気低迷の理由として報道してはならない」という情報統制でもしかれているのか?と疑ってしまいます。  消費税の悪影響を意図的に無視しているとしか考えられません。 ▼回復しない個人消費に引きずられる企業投資 「課題は設備投資。政府として企業の経営者に対し、積極的な投資を求めていく」  甘利明大臣はこう述べていますが、景気低迷の責任を企業に押し付けるのは、少々お門違いです。政府としてやるべきは、企業に対して投資を訴えるのではなく、企業が進んで投資を行いたくなるような環境を用意することです。  企業は投資資金を回収できるような環境が実現されれば、政府が黙っていても進んで投資します。ですが、図1で示したように、増税後家計消費が低迷している現在の状況において、企業が投資を躊躇ってしまうのは当然のことです。  儲けられる見込みもないのに、進んで投資をするバカな企業はありません。  しかし、のんきな政府は消費の低迷、企業の投資の低迷は一時的なものと見ていますが、見通しが甘すぎです。次のグラフ(図2)は、機械受注統計の推移ですが、昨年の増税で一旦下落し、その後なんとか持ち直してきたものの、ここ最近再び減少に転じています。 ⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=984891 機械受注統計の推移 企業が増産のための設備投資を行うには、予め機械を購入して準備をしておかなければなりません。したがって、機械受注は、企業の実際の設備投資よりも6カ月から9カ月程度の先行性を持っています。この機械受注が減少を始めたということは、今から半年後の企業の設備投資は、減少してしまう可能性が極めて高いと言えるのです。  すなわち、民間企業は家計消費の低迷は今後も長く続くだろうと予想し、すでに投資の縮小を始めました。  これは企業を責めても仕方がないでしょう。企業だって無理に投資をして、破綻してしまったら元も子もありません。政府の思惑通りに動いてはくれません。  政府、財務省は、企業への責任転嫁はやめ、昨年の消費税増税の失敗を素直に認めるべきではないでしょうか? 往生際が悪すぎです。  それにしても、甘利さん。TPPでの粘り強い交渉によって、せっかく政治家としての株が上がったのに、これでは台無しです。なぜそこまでして消費税増税の影響をひた隠しにするのでしょうか。理解に苦しみます。 ▼安倍首相の英断に期待します  安倍首相は国会の答弁にて「リーマンショック級の経済的打撃がない限り、予定通り消費税を10%に引き上げる」と主張しています。増税政局の山場は恐らく来年の参議院選挙のタイミング。昨年の増税延期の決断のときのように、ギリギリまで手の内を明かさない算段なのだろうと思います。  まさか、賢明な安倍首相がGDPが二期連続でマイナスとなり、個人消費が低迷して、将来の設備投資も縮小する可能性の高いこのような状況において、10%への増税を断行するつもりはないと信じています。  さもなくば、来年の参議院選挙は大敗し、支持率も急落。安倍首相の悲願である憲法の改正、戦後レジームからの脱却も実現不可能となります。それどころか、短期間で2回の消費税増税という暴挙をやってのけた日には、1997年の消費税増税のときと同様に、失業率が跳ね上がり、自殺者が一万人近くも急上昇するという大惨事を引き起こすことになりかねません。 年間自殺者数の推移 繰り返しますが、まさか増税を決断するというお考えはありませんよね?  安倍首相の英断に期待します。 ◆まとめ7-9月期のGDPが二期連続のマイナス成長に原因は明らかに昨年の消費税増税の悪影響増税支持の政府、マスコミは増税の悪影響を隠そうとしている増税、日本経済の崩壊を止められるのは安倍首相の判断のみ安倍首相の英断に期待する 【山本博一】 1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ
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