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世界経済危機には「減税」で対抗せよ【経済ブロガー・山本博一】

連載27【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】円相場が一時110円台に! アベノミクスはもう終わり?  11日、海外の市場にて一時円相場が1ドル=110円台を記録しました。これは2014年10月以来、およそ1年3か月ぶりの出来事です。つい10日前は121円台だったのに、10円近くも円が急騰しました。まさしく異常事態と言えるでしょう。 世界経済危機には「減税」で対抗せよ【経済ブロガー・山本博一】 円高、株安の原因について、はっきりと「これだ!」と断定できるものはありません。さまざまな要因が複雑に絡み合い、不安が増幅されて、比較的安全と言われている日本円、日本国債が買われている状況です。 ・中国の経済不安 ・ドイツ銀行ショック ・アメリカの追加利上げ時期の不透明化 ・アメリカ利上げによる途上国の経済金融不安 ・原油価格下落による産油国の経済不安  昨年からくすぶっている中国の経済不安に、今週ドイツ銀行における信用不安がプラスされ、アメリカのFRBのイエレン議長が、不安定化する経済状況を理由に、利上げの時期延長を匂わせました。イエレン議長の曖昧な態度が市場の不安を増幅させてしまっています。  また、原油価格の下落により、中東やロシアなどの産油国の経済は低迷、アメリカの利上げの影響で、途上国から資金が引き上げられ金融不安が増大しています。  株を買えるような要素は一つもありません。世界的な連鎖株安に陥るのは当然であり、この状況は日本一国の経済政策だけでどうにかできるレベルを超えています。  これらは、まさにリーマン・ショック級の緊急事態です。  2月11日の日経新聞によると、株安によって失われた世界の時価総額は、上海株式市場が暴落を始める前の昨年5月末より、実に1600兆円(14兆ドル)にも上るということです。  ちなみにリーマン・ショックの時は、2007年末から08年末にかけて、世界の株式の時価総額は30兆ドルほど減少しました。つまり現在の経済ショックはリーマン・ショックの半分ほどということになりますが、まだまだ今の経済不安、特に中国経済の問題は底が見えません。今後も世界経済の混乱は続くと予想されます。  ところがマスコミは、今回の株安と円高が日銀の「マイナス金利」導入決定の直後であったこともあり、鬼の首を取ったかのように「アベノミクスの失敗!」、「早くもマイナス金利の効果が終わった!」と繰り返し報道しています。  あの……今回の株安は「全世界規模」なのですが……。日銀の金融政策および、アベノミクスは全世界の景気をも左右するものなのでしょうか? そんな馬鹿な話はありません。  また、マイナス金利の実際の導入は2月16日からです。終わるも何も、まだマイナス金利は始まってもいない、これからなのですが――。  それにしても、マスコミの報道はいいかげんの一言です。たしか円安が進んでいたときは、ドルベースで計算すると日本のGDPはマイナス成長だと政権を批判していたと思います。しかし、ここ一週間で円高が9%も進みましたので、ドル換算した日本のGDPは9%と中国もびっくりの高成長率を叩きだしたことになります。これを評価してくれるマスコミはもちろん皆無です。おかしいですね。 ▼さらにGDPはマイナス成長、これで増税できるわけがない  内閣府が15日発表した昨年2015年の10~12月期GDPの速報値は、年率換算で1.4%のマイナス成長でした。  マイナスの要因は個人消費の低迷です。雇用者全員が受け取る所得の合計である雇用者報酬は増えているにもかかわらず、消費が振るいません。これは国民の消費マインドを大きく冷やす要因、2014年の消費税増税の影響と断言できます。  これまで私は2015年になれば、消費税増税の影響はある程度弱まると考えていましたが、現在ではその認識の甘さを痛感しています。よく考えて見れば、増税は2014年の単発で終わるものではないのです。一旦税率を引き上げれば未来永劫、永遠に国民に負担となってのしかかかってきます。その影響は消えることはありません。  増税の延期だけでは、単なる現状の維持です。これでは完全にジリ貧。日本経済の復活は遠のくばかりです。  世界経済の失速に加えて、GDPのマイナス成長。もはや「増税の延期」どころではありません。消費税の「減税」を検討しなければならない状況になってきているのではないでしょうか? ■まとめ2月上旬の円高株安は世界経済の不安が原因マスコミはマイナス金利のせいにしたがっているがマイナス金利は2月16日からさらに10-12月期のGDPはマイナス成長マイナス成長+世界経済危機 このような状況で増税は無理。減税が必要な事態 【山本博一】 1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。動画配信番組「チャンネルくらら」の『ゆる~く学ぼう!日本経済』に出演中。4児のパパ
日本経済が頂点に立つこれだけの理由

今、世界中が不況に苦しむ中、15年に及ぶデフレ不況を抜け出した日本経済は、必ず、頂点に立てる!

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