安倍首相は増税延期を今こそ決断せよ!【経済ブロガー・山本博一】
連載29【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】
▼もう後は安倍首相の「延期」の決断のみ
・世論の大反対
・閣僚による増税への懸念
・景気の悪化、世界経済の先行き不安
・ノーベル賞受賞経済学者による警告
・増税で財政を健全化できない統計的な事実
これだけお膳立てされて、増税延期の決断すらできないのであれば、憲法改正どころか、もう何もできないと思います。選挙も負けてしまうことでしょう。
消費税の政局はもう首相の決断、ただそれだけのところまできているのです。
▼国民の6割が増税に反対している
最近の世論調査では増税反対が6割に迫るとのこと。国民は増税を望んでいません。安倍首相は財務省の顔色を伺うことなどせず、さっさと増税凍結を決断すべきです。
さらに残りの4割の増税賛成者も、その大半は財務省の財政破綻デマを真面目に信じているだけにすぎません。そもそも増税されて喜ぶ国民はいません。民意は完全に「増税反対」に傾いています。
本来であれば、あれだけ首相官邸デモを持ち上げ、安倍政権は国民の声を聞け!と煽りまくっていたマスコミこそが、この増税反対の世論調査の結果を重く受け止め、増税反対の主張をしなければならないはずです。しかし、最近のマスコミの報道はというと……。
「国民の声を聞き、増税延期すれば確かに景気は上向くが、財政健全化は遠のく、1000兆円を超える『国の借金』をなんとかしないといけない。安倍政権は難しい二者択一に迫られている」
と、あたかも政策のジレンマに陥って身動きが取れなくなっているかのような報道をしていますが、そんなことはありません。増税を延期し、景気が回復すれば財政は悪化するどころか改善できます。むしろ増税した方が財政健全化は遠のくのです。
これは過去の統計を見ても明らかです。
▼増税をしても税収が増えないのであれば意味がない
これは菅官房長官の、1997年の3%から5%への消費税増税の失敗のことについて言及した発言です。
増税により日本の景気が急激に悪化。その結果、法人や個人が納める法人所得税額が激減したため、消費税増税分をチャラにしてしまいました。1997年の増税以降、ずっと税収が同年を上回らない年が続いています(図1参照)。
しかし、「いや2014年に増税したが、2014年、2015年と税収は増加している。増税したら税収が減るという主張は間違いだった」との指摘がありますが、2008年に発生したリーマンショックの影響で、日本経済はどん底に叩き落され、さらに追い打ちをかけるように、民主党政権による無為無策の暗黒の3年間が続きました。
こんな最悪の経済状態からなら、普通のデフレ不況対策をやれば景気が上向き、法人所得税が増えるのは当たり前です。
要するに2014年、2015年の税収はアベノミクスによる円高是正ボーナスによって助けられた面が大きいと考えます。この増加分が、増税の悪影響分を相殺したわけです。もし、アベノミクスがなければ税収はかなり悲惨な結果になっていたでしょう。
しかし、次の2017年の増税時にはどうでしょうか? リーマンショック&民主政権経済失策からのリカバリーボーナス、円高是正ボーナスはもう期待できません。
いかなアベノミクスといえども、2回の増税を行って景気を維持向上させることなど不可能です。8%の消費税率でも横ばいがやっとですから。それに中国経済の不安、アメリカの利上げ、欧州の経済不調など、外的な要因も非常に悪い。8%のときは減収しなかったから10%にしても大丈夫だろうなどというアホな考えは捨ててください。
▼消費税5%に戻しても財政健全化は可能
国債や債券の格付けをしている格付け会社のフィッチや、ムーディーズは、10%への増税を再度延長した場合、日本の債務が拡大してしまうため、日本国債の格付けを引き下げると警告していますが、何を根拠にそのようなことを言っているのかさっぱりわかりません。
私は増税延期どころか、5%に減税してしまっても問題ない。むしろそのほうが財政は健全化すると考えています。
次のグラフを見て下さい。
⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1072513
このグラフは国債の利払い費を含まない政府の財政収支(基礎的財政収支と言います)の推移ですが、小泉政権時の2007年に黒字化寸前まで収支が改善していることがわかります。
もちろん当時の消費税率は5%です。増税していないのにもかかわらず財政収支が改善した理由、それは景気の回復です。この頃は「実感なき景気回復」とマスコミに揶揄されていたものの、企業業績は好調で、法人税収が伸び、政府の財政収支は大幅に改善しました。
2008年のリーマンショックがなければ、日本の財政は健全化していたに違いありません。
繰り返しになりますが、当時の消費税率は5%です。
つまり、政府の税収は税率ではなく、景気に大きく左右されるということです。景気を大幅に悪化させてしまう増税をしても財政健全化は遠のくばかりなのです。
「財政健全化の鍵は経済成長にあり」です。
政府は16日に開く国際金融経済分析会合に、ノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者、ジョセフ・スティグリッツ氏を招く予定です。スティグリッツ氏は2013年の段階から日本の消費税増税に対して警告を投げかけていた人物。きっとこの会合でも力強く増税に反対してくれるに違いありません。
安倍首相、ここが正念場です。決断をお願いします。
■まとめ
・世論の6割が増税に反対
・閣僚からも増税に対する疑問が噴出
・増税しても景気が悪化すれば税収は増えない
・逆に増税しなくても景気さえ上向けば財政は改善する
・ノーベル賞学者スティグリッツ氏は増税に強く反対
・増税延期の機運は高まった。後は首相の決断のみ
【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。動画配信番組「チャンネルくらら」の『ゆる~く学ぼう!日本経済』に出演中。4児のパパ
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