東武東上線沿線が危険地帯に。引ったくり、暴行、恐喝…犯行グループを直撃
ここ2年ほど、マイルドヤンキーに代表されるような郊外で生きる若者たちを肯定的に捉える言説が目立っている。
郊外型のショッピングモールでカー用品を買い、休日は仲間と実家の駐車場でBBQを楽しむ。地元と仲間を愛す彼らをマーケティングの対象として見直す動きが見られるが、その実態に目を向けると、決して彼らを手放しで賞賛すべきではないことが明らかになってくる。
東京・池袋から北西に伸びる東武東上線。埼玉県の川越市、坂戸市、小川町などのベッドタウンから都心を結ぶこの沿線において、今年春から、10~20代の非行少年グループによる犯罪が目立っている。
その内容は引ったくり、暴行、恐喝。いったい、東上線沿線で何が起きているのか。被害者と加害者の声からその実態を明らかにしよう。
埼玉県川越市。今年春、事件は川越駅からほど近いクレアモールという繁華街で発生した。川越市は東上線沿いではもっとも活気のある歓楽街といわれているが、深夜0時をすぎるとネオンはたちまち消え、行き交う人もまばらになる。
取材班は深夜の帰宅中に“親父狩り”の被害にあったAさん(40代・男性)に話を聞くことができた。
「深夜2時ごろ。仕事を終えて自転車に乗って帰っていました。クレアモールに差し掛かったときに、前方に人がいたのでよけようとしたら、後ろから違う男に蹴られて転倒したんです」
それからAさんが財布を奪われるまでは一瞬の出来事だった。
「『財布を出せ』と言われて。最初はタチの悪い酔っ払いだと思って拒否したんですが、顔面を思いっきり蹴ってきたんです」
助けを求めようと周囲を見渡したAさんだったが、行き交う人はおらず「マズい」と判断した彼は犯人に渋々財布を渡した。
その後、スーツ姿の男2人から暴行を受け、Aさんは頭蓋骨骨折全治一ヶ月の大怪我を負う。
「男の一人に『カネはやるからそれ以外のものは返してほしい』というと、小声で『わかった』と言い、私の財布を持って車に戻り、現金3万を抜いてから私の財布を返してきました。一度車に戻ったのは私の財布の指紋をぬぐっていたからだと思います」
Aさんが驚くのは、このような大胆な犯行が2016年の現在繰り広げられていることだ。
「これが80年代の歌舞伎町だったらわかりますよ。こんな平和な町で親父狩りの被害に遭うとは思わなかった。そもそも今の時代、財布に現金を入れている人間は少ないのになぜ引ったくりなんてするのか…」
ひったくりが許されざる行為であることは言うまでもないが、ひったくりは数ある犯罪の中でもリスクの割に得られる金額は少額。今回のケースでは運転手を含め犯人グループが3人と仮定すると、一人当たりの取り分はたった1万円。遊ぶ金ほしさの突発的な犯行に思えるが、犯人が車を使っていることを見ると計画的な側面も伺える。
「東上線沿いの飲み屋は常連のお客様で成り立っているから、こういう事件のせいで夜の客足が遠のいてしまうのは本当に困る。皆が安全に飲める街になってほしい。僕の願いはそれだけです」
現在も川越から坂戸にかけてこうした大胆な悪事に手を染める若者が息を潜めている。
川越・坂戸が危ない
酔っ払いだと思った
渋々財布を渡した
1
2
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ