“みんな恋愛をしていない”現代の「恋愛小説の形」とは? 川村元気が2年ぶりの新作を語る
今年だけでも映画『君の名は。』『怒り』『何者』を手掛けた映画プロデューサーであり、さらには処女作『世界から猫が消えたなら』がミリオンセラーとなった小説家でもある川村元気。そんな彼が、新作小説『四月になれば彼女は』を上梓した。
130万部を超える大ヒットとなった第一作目では「死」をテーマに余命宣告された青年を描き、2作目『億男』では宝くじで3億円当たる男を通して「お金」の意味を問いかけた川村だが、3作目のテーマに選んだのは「恋愛」だ。
主人公は精神科医の藤代(年齢は未公表だが30代前半の設定)。婚約者・弥生との挙式を控えながらもどこか空虚な日々を過ごす彼のもとに、学生時代の恋人・ハルから9年ぶりに手紙が届く。それをきっかけに蘇る彼女との思い出。現代と過去のシーンが交互に展開されながら、藤代と弥生、ハル、さらに多くの登場人物を巻き込んで物語は進み、いつしか読者の脳裏には「恋愛」の形がだんだんと浮かび上がってくる。
この作品は週刊文春誌上で今年4月から連載されてきたものだが、多忙なプロデューサー業の合間をぬって、川村元気はどのような思いで本作を執筆してきたのか。今、エンタメのど真ん中で大活躍する男の胸中を尋ねた。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1230991
――まず、新作ではなぜ「恋愛」をテーマにしたんですか?
1作目は「生と死」をテーマにして、2作目は「お金」をテーマにして書いたんですが、僕は小説ではその時々で自分が気になっていることや知りたいことを書こうと思っていて、その次のテーマとなると「恋愛」だと思ったんです。「人間がどうやってもコントロールできないものは何だろう?」と思った時に、最後の砦が恋愛だなと。
そこで、どういう恋愛小説を書けばいいのかなと思った時に、それこそ映画『モテキ』のときにいろんな人に取材をしたのがすごく面白かった印象が残っていたんですよ。だから今回もそういう風に「全部がこの世界にいる人の言葉でできている、実話をモザイクのように構成したラブストーリーを書きたい」と思って、取材を始めたてみたんです。
そうして取材をしていると、僕の周りの30、40代の人がまるで熱烈な恋愛をしていないことに愕然としたんですよね。彼らにしてみたら恋愛状態にいるほうが異常なんです。だから、今の“正常”である「恋愛をしていない状態」を書けばいいんだと思ったんです。『東京ラブストーリー』や『冷静と情熱のあいだ』のような物語は、現代においては憧れの“ファンタジー”のような気がして。今は恋愛感情を失ってしまった男女がどうやって生きていくのかということのほうが、恋愛小説の形だと思ったんです。
この小説は、全部が「本当にあった恋愛」でできている
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ