ストーンコールドとアンダーテイカーの奇妙な友情――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第294回(1998年編)
月曜夜の連続ドラマ“ロウ・イズ・ウォー”の1998年夏のストーリーラインは、ビンス・マクマホンと“悪の首脳部”の陰謀とWWEスーパースターズの苦悩――ビンス、“ストーンコールド”スティーブ・オースチン、そしてジ・アンダーテイカーの3者の人間関係だった。
いまでこそストーリーラインという単語がプロレス用語としてごくふつうに使われるようになったが、当時の“ロウ”のドラマ展開を日本のマスメディアが活字で読者に伝える場合のいいまわしには“因縁”“遺恨”“抗争”といった表現が用いられていた。
8月のスーパーイベント“サマースラム”をクライマックスとする連続ドラマの“これまでのあらすじ”は(1)ビンス&首脳部はストーンコールドをWWE世界ヘビー級王座から引きずり下ろそうと謀略をはりめぐらせていた(2)これに対しストーンコールドは“ファック・ユー”の姿勢を貫き(3)いっぽう、アンダーテイカーも“世界盗り”を宣言している、といったものだった。
ビンスの“刺客”ケインは6.28PPV“キング・オブ・ザ・リング”ピッツバーグ大会でストーンコールドを下しWWE世界王座を奪取したが、翌29日の“ロウ”クリーブランド大会ではストーンコールドがケインを下し、たった一夜で同王座奪回に成功した。
7.13“ロウ”イーストラサフォード大会ではケイン&マンカインドの“怪奇派コンビ”がニューエイジ・アウトローズ(“ロードドッグ”ジェシー・ジェームズ&ビリー・ガン)を下してWWE世界タッグ王座を奪取。ビンスはアンダーテイカーに対してケイン&マンカインドとの共闘を強要するが、アンダーテイカーの返答は「ゴー・トゥ・ヘル(地獄へ堕ちろ)」だった。
7.26PPV“イン・ユア・ハウス/フーリー・ローデッド”フレズノ大会ではストーンコールドとアンダーテイカーが超異色コンビを結成し、ケイン&マンカインドが保持するWWE世界タッグ王座に挑戦した。
ストーンコールドとアンダーテイカーの緊急合体の背景には“悪の首脳部”対“アンチ首脳部派”の対立構造があった。“アンチ首脳部派”とは背広組のいいなりにならないすべてのWWEスーパースターズのことで、そのリーダー格がストーンコールドであったことはいうまでもない。
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