アメリカじゅうのメディアが“ブーム”に大騒ぎ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第305回(1998年編)
いまから19年まえ、1998年の11月ごろ、アメリカのメインストリームの活字メディアはプロレス関連の記事であふれ返っていた。
ニュース雑誌としてはアメリカでもっとも権威があるといわれている『ニューズウィーク』誌、スポーツ雑誌の老舗である『スポーツイラストレーテッド』誌、新聞では『ロサンゼルス・タイムス』紙、タブロイド系の『ニューヨーク・ポスト』紙などがこぞってトレンド・カルチャーとしてプロレスを取り上げ、WWEとWCWの“月曜TV戦争”、ビンス・マクマホンWWEオーナーの“奇行”の数かずとテレビ番組“ロウ・イズ・ウォー”のソープオペラ化を社会現象と位置づけていた。
元WWEスーパースター兼カラーコメンテーターで、引退後はアクション映画俳優やラジオのパーソナリティーとして活躍していたジェシー“ザ・ボディー”ベンチュラが同年11月のミネソタ州知事選に当選し、まさかの“プロレスラー知事”が誕生したこともプロレス・ブームに拍車をかけた。
『ニューズウィーク』誌は11月16日号でベンチュラの州知事選当選のニュースを“タチの悪いジョーク”といったトーンで扱い、翌週11月23日号では“ストーンコールド”スティーブ・オースチンの爆発的な人気をひとつの切り口にプロレス・ブームの解析を試みる特集記事を掲載した。
社会部記者による同記事はプロレス経済を“10億ドル市場”と形容し、ストーンコールドの人気を「理解に苦しむサムシング」としてやや懐疑的に描いた。
“10億ドル市場”という具体的な数字は関係者のコメントを引用したもので、データ的な根拠は示されず、同誌による独自な調査結果でもなかった。大メディアがプロレス的なフィクションにほんろうされた一例ということになるのだろう。
しかし、活字メディアのオーソリティーである『ニューズウィーク』誌が2週連続で、ふだんは取り上げないプロレス関連のストーリーにページを割いた事実はひじょうに大きい。
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