ビンスの強権発動でWWE世界王座“空位”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第302回(1998年編)
月曜夜のTVショー“ロウ・イズ・ウォー”は完全にソープオペラ化し、ビンス・マクマホンと“悪の首脳部”の陰謀でWWE世界ヘビー級王座は“空位”――。
新時代のヒーローとして長期政権を築くものとみられていた“ストーンコールド”スティーブ・オースチンは、3.29“レッスルマニア14”での感動的な新チャンピオン誕生シーンからわずか半年間で2度も王座から転落。ビンスはWWEオーナー社長としてのポジションとその権力をそのまま連続ドラマのストーリーに“変換”してしまった。
1998年下半期のストーリーラインをかんたんにまとめるとこうなる。6.28“キング・オブ・ザ・リング”でストーンコールドがケインに敗れWWE王座を失ったが、翌日の6.29“ロウ”で同王座奪回。8.30“サマースラム”で実現したストーンコールド対アンダーテイカーの“頂上対決”は、ストーンコールドがフォール勝ちで王座防衛に成功した。
9.27“イン・ユア・ハウス/ブレイクダウン”のメインイベントにラインナップされたストーンコールド対アンダーテイカー対ケインのWWE世界戦“トリプル・スレット”ではアンダーテイカーとケインがストーンコールドを同時にフォールし、ストーンコールドは王座から転落したが、試合後にチャンピオンベルトを“持ち逃げ”したビンスは王座を“空位”と発表。
ストーンコールドとアンダーテイカーのライバル関係、アンダーテイカーとケインの近親憎悪という同時進行するふたつのドラマはto be continuedとなった。
10.18“イン・ユア・ハウス/ジャッジメント・デー”でおこなわれたアンダーテイカー対ケインの王座決定戦は、特別レフェリーのストーンコールドがアンダーテイカーとケインのダブル・フォール裁定を下したためWWE王座はまたしても“空位”となり、11.15“サバイバー・シリーズ”セントルイス大会で改めて14戦出場・王座決定トーナメントが開催されることになった。
月曜夜の“ロウ”では毎週、ストーンコールドとビンスが定番の衝突シーンをくり返し、ふたりはどこまでも“犬猿の仲”という設定で連続ドラマが進行していった。あるときはストーンコールドが警官隊に取り押さえられてアリーナから強制退場させられ、またあるときはストーンコールドに恫喝されたビンスがリング上でまさかの“失禁”。WWEオーナーの体を張った演技が高視聴率となって番組にハネ返ってきた。
1
2
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ