熊本地震から1年 南海トラフ地震カウントダウンで再び注目の「週刊MEGA地震予測」
想定死者数33万人超、経済損失220兆円、そして、30年以内の地震発生確率70%――。日本列島にそんな壊滅的な被害をもたらすと言われる「南海トラフ地震」が間近に迫っているのか? ここ1か月余りの間に不気味な兆候が表れている。
先月2日深夜から3日にかけ、宮崎県延岡市や高千穂町などを中心に最大震度4の地震が観測された。気象庁によると震源は日向灘で、マグニチュードは推定5.2。折しも、京都大学防災研究所地震予知研究センター宮崎観測所と東京大学地震研究所の共同研究グループが、この地でゆっくりと断層がすべる「スロー地震」の調査を開始したこともあって、南海トラフ地震への影響が懸念されている。
日向灘周辺は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界に近く、フィリピン海プレートが大陸プレートの下に1年で7㎝程度沈み込むため、それに伴い小さな地震が頻発。数十年間隔でM7クラスの地震も起きているエリアだ。
「ついに、南海トラフ地震のカウントダウンが始まった」
日向灘の異変を機にそんな懸念の声が専門家の間にも広がっているが、果たして、この「不気味な兆候」は何を意味しているのか? これまで数々の巨大地震発生を予見してきたメルマガ「週刊MEGA地震予測」で情報発信を行い、JESEA(地震科学探査機構)の会長も務める村井俊治東京大学名誉教授が話す。
「日向灘の地震は、ちょうど一年前の昨年4月に起きた熊本地震の影響によるものです。東日本大震災にも匹敵するほどの震度7をもたらしたこの地震の影響は、実は、一般に考えられるより遥かに大きい。熊本地震で特徴的なのは、周囲の5つほどのエリアで地殻がまったく異なる動きをしていること。ある地域では非常に隆起しているのに、ある地域では沈降している。水平方向の動きを見ても、熊本や城南は北東に動いているのに、すぐ近くの長陽では正反対の南西に動いている。熊本地震で動いた地殻の境界の部分に、相当な歪みが溜まっている。つまり、地震で地殻が動いたことによって、今度はその『境目』が危なくなってきているのです。そして、この境目に当たる場所のひとつが日向灘なのです」
不気味なことに、日向灘周辺で発生した地震の震源は、ちょうど南海トラフの西端に位置する。素人目で見ても、日向灘の異変が、この周辺のプレートに何らかの影響を及ぼすのではないか? そう勘ぐらずにはいられないほどの近さなのだ。村井氏が続ける。
「影響は、さらに東方に及ぶ可能性があります。四国、紀伊半島や志摩半島といった東南海から、御前崎、伊豆半島といった東海エリアにまで及ぶ危険があるのです。四国西部の地殻は2年前に比べて隆起しているが、東部、特に徳島県では全県で沈降していました。ところが、熊本地震の後、徳島県の地殻は隆起に転じている……。我々の分析の経験則からは、沈降から隆起に転じたとき、大きな地震が起きることがわかっています。昨年10月に起きた鳥取県中部地震、そして熊本地震も2年前から地殻が沈降していたが、隆起に転じたときに地震が起きている。こうした反転現象が危ないのです」
村井氏が会長を務めるJESEAは、国土地理院が全国約1300か所に設置した電子基準点のGNSS(Global Navigation Satellite System=衛星測位)データを解析している。自動車のナビと同じ理屈だが、複数の測位衛星と地上の受信機の距離を測量することで、受信機の正確な位置を知ることができるという。こうして得られた地殻の上下・水平方向の変動を分析し、異常な動きから大地震の前兆を捉え、地震の予測に繋げているのだ。
「プレートの地図では、四国や南海、東南海はユーラシアプレートの上に載っているが、あれはあくまでも推定に過ぎません。我われの電子基準点の解析では、四国の足摺岬、紀伊半島の潮岬、志摩半島、さらに東方の御前崎、伊豆半島の南の地殻は、ユーラシアプレートではなく、フィリピン海プレート上の伊豆諸島と同じような動きをしていることがわかっています。つまり、フィリピン海プレートの境界は、四国、紀伊半島、本州太平洋岸に連なっていることになる。そして、室戸岬と潮岬は、ここ2年ほどは沈降を続けています。繰り返しになりますが、地殻が沈降しているときのほうが地震の危険性が高い。このエリアで沈降が隆起に反転したとき、南海、東南海で大地震が起きる怖れが大きいのです」
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