馬場さんが指摘した「エースのダメなところ」――フミ斎藤のプロレス読本#039【全日本ガイジン編エピソード8】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
ジャイアント馬場さんからそういわれてしまったら、もう引導を渡されたと同じなのである。
「ジョニー・エースのダメなところはこういうところなんですよ」
日曜の夜中に家でごろごろしながらテレビでプロレス中継をみ観ていたら、ゲスト解説者の馬場さんの厳しいコメントが耳に突き刺さってきた。
テレビの画面はスタン・ハンセン&ジョニー・エース対テリー・ゴーディ&スティーブ・ウィリアムスのタッグマッチを映し出していた。
ほんとうにエースはへろへろだった。よほど体調が悪かったのか、それともはじめからスタミナに問題があるのか、立っているのがやっとというような顔つきでリングのなかをうろうろするばかりだった。
それでもとりあえず形だけは技らしきものを出そうと必死で試みるけれど、トライすればするほどよけい中途半端な格好になってしまう。
全日本プロレスにリングに定着して以来、内容的には最低の試合だったのではないだろうか。とにかくデキが悪すぎた。ぼくだけじゃない。みんながそう感じていた。
週刊プロレスの全日本プロレス担当の市瀬英俊記者も「あの日のエースはひどかった」といっていたし、同じ時間帯にテレビを観ていたぼくも友人も「エース、どうしちゃったの?」と話していた。
結論から先にいってしまえば、エースの悩みとは、プロレスがむずかしくてむずかしくてしようがないということである。自分のレスリングとはどんなものなのか。ジョニー・エースとはどうあるべきなのか。なにをどうしたらいいのか、わからなくなっていた。
試合に関しては、タッグパートナーでありコーチ役でもあるハンセンのアドバイスをしっかり聞いておけばいい。じっさいのタッグマッチのシチュエーションではいわれたとおりに動くしかないし、そうしないとハンセンに迷惑をかけることになる。
試合以外のことになるともっと困ってしまう。どんな色のタイツとシューズを選べばいちばんジョニー・エースらしいのかがなかなかわからない。あごヒゲもじつはハンセンの命令ではやした。
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