若者は勘違いしている。80年代青春男はバブルの時そんなにオイシイ思いをしていない
現在ちょうど50代半ばころの男、つまりハタチ前後にバブル前夜を過ごした男は、たとえば若い世代から「バブルのときは派手に遊んだんでしょ?」なんて問われたとき、「え~、そうでもないんだけど」と、戸惑いながらお茶を濁すケースが多かったりする。彼らの結構な割合が、本当に「たいしてオイシイ思いをしていない」からである。
当時は、まだ「大学生起業家」みたいな存在が稀で、誰もが終身雇用を当然のごとく受け入れ、少しでも大きな企業に就職することを目指していた。ゆえに、本格的なバブル時代に突入したころ、彼らはまだ入社3年程度のぺーぺーで、バブルの恩恵を謳歌していた「ちょっと上世代の諸先輩方々」がカネに飽かしてハメを外しまくっていたさまを「いいなぁ……」と横目で眺めながら、ただ羨ましがっていただけの世代なのだ。
たしかに「前夜」とはいえ、景気は間違いなく上向きであった。凡庸な人材が、今だと信じられないような有名企業にも続々採用されていた。が、「オイシイ思い」の度合いが帯に短しタスキに長し状態だったせいか「あのころは良かった…」と懐古にひたることもなく、「やっぱバブル就職組(一般的には1965~1969年生まれくらいを指す)のオッサンは使えねえな」と陰口をたたかれることも、そうはない。
いわば、団塊とバブルの狭間に置かれた「2番バッター」のような存在で、そんな「影の薄さ」と「バブルに乗り損ねた軽いコンプレックス」を逆手に取りながら、バブル崩壊後をぬるっと生き抜いてきたこの世代の男たちは、意外に打たれ強く、その暖簾に腕押し的なしぶとさこそが持ち味なのかもしれない。
文/山田ゴメス、写真/産経新聞社大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
『80's青春男大百科』 マイケル富岡、向谷実ほか80年代を象徴する人物たちの貴重な証言。さらにはカルチャー、アイテム、ガジェットで、世の中がバブル景気に突入する直前のあの時代を振り返る! |
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