レジー・ベネット「サムイ島で釈迦とおしゃべりしたぞ」――フミ斎藤のプロレス読本#143[ガールズはガールズ編エピソード13]
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
コー・サムイ、コー・サムイ。レジー・ベネットは、コー・サムイKoh Samuiのことをだれかに話して聞かせたくてしようがない様子だった。
サムイ島はタイで3番めに大きな島。バンコクの南710キロに位置するリゾート・アイランド。スラターニ県。人口は3万5000人。面積247平方キロメートル。
島の経済を支えているのは、観光ビジネスとココナッツの生産。もちろん、なにからなにまで1年じゅう夏のメニュー。時計のいらない場所。
レジーねえさんは、サムイ島のラマイ・ビーチに導かれてしまった。トーキョー(成田)からバンコクまでのフライトは約5時間。そこから先のことはとくに決めないでおいたら、バンコクに着いたとたんサムイ島のイメージが頭に浮かんできた。
島へのアクセスは、バンコクからスラターニまで鉄道を使い、スラターニからサムイ島まで船に乗る方法か、バンコク―サムイ島間を飛んでいるバンコク・エアウェイズの直行便を利用するかのどちらかだ。
国内線のチェッキングカウンターへ行ってみたら次の便に空席があった。
観光のピークシーズンは1月半ばから6月くらいまでで、7月から9月いっぱいは軽めの雨期。10月中旬から翌年の1月まではどしゃ降りの雨期になる。
レジーねえさんは、太陽とスコールが追いかけっこをする1年のうちの最後の2週間をこの島で過ごした。カレンダーのうえでは夏休みと冬休みのちょうど中間にあたる季節だから、観光客らしき人びとの姿はほとんどみかけなかった。
これといったあてもなくビーチをほっつき歩き、たまたま目にとまった民宿のフロントを訪ね、そこのおじさんとおばさんが経営するビーチ沿いのバンガローに1週間、お世話になることにした。
「何人(なにじん)なのだ?」とたずねられたので「アメリカンだ」と答えたら「アメリカ人がここに来るのはめずらしい」とほめられた。
でも、バックパッキングはアメリカ人の専売特許である。フツーのジャパニーズ――たとえばぼく――はそこまで無計画な旅はなかなかできない。
「だからダメなんだよ! Have A Life!」とレジーねえさんは力説する。
たまにはなんにもプランを立てずに時間を過ごすこと。明るくなったら起きて、暗くなったら寝る。おなかが空いたら食べて、そうじゃなかったらなにも食べない。
音楽も聴かないし、テレビも観ない。新聞も雑誌も読まない。ただ、目と鼻と耳と肌を通して体のなかに入ってくる海の感覚だけが“情報”になる。島に2、3日いると地球の機嫌がわかってくるような気がする。
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