おそろいの赤のブレザーが似合っていたブルさんと北斗――フミ斎藤のプロレス読本#140[ガールズはガールズ編エピソード10]
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
おそろいの赤のブレザーを着たブル中野と北斗晶は、タクシーのトランクから大きなスーツケースを引っぱりだしているところだった。
ブレザーの左胸のポケットには全日本女子プロレスのロゴマークのエンブレムが縫いつけられている。きっと紺色のスカートだけは自前のものなのだろう。
北斗はミ二スカートで、ブルさんはヒザ下15センチのボックス。制服みたいなものを着るときでも、ちょっとしたコーディネートの仕方ひとつで個性のちがいははっきりとわかる。
ブルさん、北斗、豊田真奈美、吉田万里子の4人は『平和のための平壌国際体育・文化祝典』に出場するため、女子プロレスラーとして初めて北朝鮮の地を踏んだ。
選ばれて、近くて遠い国である朝鮮民主主義人民共和国を訪れたジャパニーズ・ガールズは、生まれて初めてプロレスを目撃する人びとのまえでいつもどおりのレスリングをいつもどおりにやってみせた。
ブルさんと北斗は、現役であって現役選手ではない。全日本女子プロレスの巡業生活から離れてずいぶん時間がたつし、ふたりともあの風景にはなじんではいけないレスラーになった。
自分たちのプロレスをつづけていくには、全日本女子プロレスではないどこか別のところで表現の場を探さなくてはならなくなった。
日本国内でやれることはすべてやってしまったアーティストやミュージシャンがそうするように、ブルさんと北斗もまた海外に活動の場を求めた。
北斗は生活そのものをメキシコに移し、ブルさんはメジャーリーグWWEと契約を交わしニューヨークへ渡った。いつのまにか、ブルさんも北斗も顔つきや雰囲気が外国で暮らすジャパニーズのそれになってきた。
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