アワビやイセエビを密漁する暴力団・外国船。監視の切り札はドローン
海の幸が豊富な日本で、高級魚や貝を狙った密漁が横行していることをご存知だろうか? 暴力団や外国籍の船による乱獲は、未来の食卓事情をも変えてしまいかねない。
密漁に対し、最新技術で対抗する漁協も出てきた。徳島大学大学院社会産業理工学研究部の三輪昌史准教授は、複数漁協からの依頼でドローンの密漁監視の実験を行ってきた。
「私が漁協での密漁監視に関わったのは’16年末からで、徳島県の伊座利漁協が最初でした。ドローンを密漁監視に活用する発想は以前からありましたが、実験まで行ったのは日本でもかなり早いほうだったと思います」
この実験では、上空から鮮明な映像が撮影可能なことを確認、実際の運用を想定したデータが収集された。そして今年はさらに進化。和歌山市・加太漁協の依頼で、夜間監視の実験を行った。
「搭載した赤外線カメラでは、無灯火の船舶や甲板上の人間も鮮明に撮影できました。監視場所の風や地形の状況によっては、導入が難しい場所もありますが、ドローンによる密漁監視は技術的には実用化が見えてきています」
課題はやはりコストだ。
「カメラを搭載したドローンを導入するには200万円程度の初期費用が必要です。操縦には一定の技術は要しますし、自動操縦でもさまざまな準備が必要になります」
技術向上やコスト低下は今も進行中。三輪氏は「数年内に実用化がされる可能性は高い」と語る。
「我々の研究室のドローンも風速20m/sの中で飛行が可能となりました。密漁監視をビジネスにする会社が現れれば、費用の問題も解決されていくでしょう」
海外では水難者の救助に成功するなど、水上での活躍も著しいドローン。日本の密漁問題解決でも鍵を握る存在になりそうだ。
取材・文/古澤誠一郎
※『週刊SPA!』5/29発売号「密漁が日本の海を殺す」より
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