甲子園の伝説・桑田真澄氏が語る。勉強できないほど猛練習させるのは大人の身勝手
8月5日、今年も甲子園で全国高校野球選手権が始まる。今年で100回目。
だが、かつてPL学園で優勝2回・準優勝2回を果たした桑田真澄さん(元読売巨人軍・投手)は、アマチュアスポーツのあり方や指導法に長年異議を唱えている。前々回・前回に続いて、桑田さんへのインタビューをお届けする。当日、桑田さんは、2017年に設立された新しい少年硬式野球の公益社団法人「グローバルベースボールリーグ」主催による「少年野球の指導者講習会」で講師を務めていた。
――桑田さんが科学的な練習方法に至った経緯はどういうことからでしょう?
桑田:高校時代ですね。僕は運良く高校1年生の夏に全国制覇することができました。「また甲子園のマウンドに戻って全国制覇をするには何が必要か」と逆算して考えた時に、根性や猛練習ではないと気づいたんです。高校1年の夏を上回る技術を習得するには毎日集中して練習しなくてはいけない。
大阪大会から甲子園大会までの試合には万全のコンディションで臨まないといけない。そのためには「練習したら栄養を摂って、よく眠る」というバランスが大事だと再認識できたんです。
バランスには野球・勉強・遊びという意味もあります。僕は中高と6年間、授業中に寝たことがないんです。なぜなら僕には放課後に勉強する時間がなかったからです。早稲田大学に行きたいという目標があったので、どんなに眠くても一生懸命授業に食らいつきました。
大学院で日本の野球界の歴史を研究しましたが、100年も前からアマチュア野球界では選手が勉強しない、素行が悪い、有力校が選手の引き抜きをするといった問題があったそうです。残念ながら100年経っても何も変わっていないんです。
一流選手になるには物事を合理的に考える力が問われるし、たとえアマチュア選手がプロになれなくても、一般社会で活躍できる人材になってほしい。そう考えたら、選手たちが勉強も頑張れる環境を僕たち大人が作ってあげないといけないんです。朝から晩まで野球をやって、勉強しろと言ってもできないですよ。体力も気力も残ってないですから。
――今は指導者にとっての過渡期なんですか?
桑田:過渡期だと思います。僕たち世代より上は世の中の変化に対して、柔軟に対応するのが難しいようにみえます。その下の世代は変わろうとしていますが、上の世代との軋轢や葛藤もあると思います。野球人口やファン層が減り続けて野球がマイナースポーツにならないために、プレイヤーズ・ファーストという考えを浸透させたいと願っています。
――日本の野球の指導のあり方として、そうした考え方に賛同する指導者も多くなってきていると思いますが。
桑田:確実に増えてはいると思います。ただ頭で分かっていてもまだ実践できていない指導者が多いと感じます。講習を受けたり資格を取得していても、いざグランドに立つとカッとなっちゃうんでしょうね。そこを打破できると変われるかなと思います。
勉強をさせず1日中野球をやらせる愚
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